岡田武史氏「新スタジアム構想」の意外な狙い 子ども食堂の領域にも近いビジョンがあった

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岡田:ぼくたちは、それに対して心の豊かさが売れる世の中にしたい。感動とか信頼とか、そういうものにおカネが回る社会が来ないと、この「借り物」を汚し続けてしまう。ぼくにも3人の子どもがいて、その子たちからさらにその次へと続く未来があり、やっぱり考える。ぼくらが売るものは信頼・感動・夢。そこにおカネが回る社会をつくれたら、子どもたちもその先の子どもたちも、この地球でなんとか生き延びられるんじゃないか。

地球46億年の歴史を460メートルにして歩いてみると、人類の誕生は最後の2センチで、温暖化は最後の0.02ミリです。地球が危ないって言うけど、地球は全然危なくない。人間が住めなくなるだけです。しかもぼくらの世代は大丈夫。子どもや孫や、その先の人たちが危ない。

……そう考えてくると「モノの豊かさより心の豊かさを大切にする社会」に変えていかないといけない。今日の株価、今日の経済に一喜一憂する状態それ自体を変えていかないといけない。そのときに、モノの豊かさがないがゆえに、心の豊かさから切り離されるような子どもがいてはいけない。にぎわいから取り残されるような子どもがいてはいけない

本当のゴールは、社会の価値観を変えること

岡田:ぼくたちの会社は「10年後にJ1優勝」というビジョンを掲げています。でもそれは「モノの豊かさより心の豊かさを大切にする社会創り」の一里塚なんです。本当のゴールは、社会の価値観を変えること

そのとき、こども食堂は今治のスタジアムになくてはならないものなんです。

湯浅:ありがとうございます。岡田さんにそのように考えていただけて、うれしく、幸せです。

栗林:ありがとうございます。私もずっとプレイパークや自然体験教室をやってきて、その中で大変な子に出会い、こども食堂を始めるに至りました。岡田さんのように影響力のある人にそのようなメッセージを発していただけることは、こども食堂に集う子どもや大人たちが、大きく勇気づけられることと思います。

岡田:とはいえ、ぼくにはノウハウがない(笑)。ぜひ、今後とも相談に乗ってください。

栗林湯浅:もちろんです!

「こども食堂は今治のスタジアムになくてはならないもの」と岡田武史さん(撮影:筆者アシスタント)
湯浅 誠 社会活動家、法政大学教授

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ゆあさ まこと / Makoto Yuasa

1969年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。2009年から足掛け3年間、内閣府参与に就任。内閣官房社会的包摂推進室長、震災ボランティア連携室長など。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。現在、朝日新聞紙面審議委員、日本弁護士連合会市民会議委員、文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」レギュラーコメンテーター。2014年度から法政大学教授。講演内容は貧困問題にとどまらず、地域活性化や男女共同参画、人権問題などにわたる。著書に、第8回大佛次郎論壇賞、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞した『反貧困』のほか、『ヒーローを待っていても世界は変わらない』など多数。

 

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