東京駅「日本百貨店さかば」の斬新な仕掛け 主役は「丸亀市」と「西伊豆町」の生産者

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日本百貨店で扱う物品を求め、全国津々浦々を訪ね歩いているという鈴木氏は、全国にネットワークを持つ。仕事の必要上だけではなく、「気になる人がいれば話しかけずにはいられない」という性格によるところも大きいようだ。道端で声をかけて知り合いになることもあるという。

この日は貸し切りだったためイスが取り払われていたが、普段はカウンターにも座れる(編集部撮影)

鈴木氏によると、今、全国の地方自治体でキーワードとなっているのが「地産地消」ならぬ「地産“他”消」。つまり、地元の資源をほかの地域で消費することで、地元を潤そうという考え方だ。検索してみると、10年前にはすでに使われている言葉のようだ。

「地域商社」を応援する動き

国の進める地域再生戦略の一環として、「地域商社」を応援する動きも出てきている。地域商社とは地域産品やサービスなどさまざまな地域資源を国内や海外に売る企業を指す。地域資源を発見し、商品をプロデュースして市場開拓、利益を地域に還元するのが目的だ。「地域創生推進交付金」の対象ともなっている。

そしてこれら地域資源の有望なマーケットとして、今、東京には全国からの熱いまなざしが寄せられているのだ。

「ほかにもさまざまな自治体に声をかけて興味を持っていただいたのですが、参加自治体以外の地域の商品も扱うということが、自治体が扱う事業としては障壁になるようです。お客様目線に立ちますと、参加自治体の食べ物だけでなく、全国のおいしいものが食べられたほうがうれしいですからね。最終的に、『それでもいいですよ。むしろそのほうがお店も盛り上がるし!』と言ってくださったのが丸亀市、西伊豆町の2自治体でした」(鈴木氏)

公的なおカネにかかわることなので、理解できない話ではない。日本百貨店さかばも、活動の一部に、丸亀市、西伊豆町の助成金を活用しているという。

ただ、相乗的なメリットも大きい。互いに離れた地域がコラボレーションして、新しい商品が作られる。お互いの販路を共有する。互いに知恵を出し合うことで、地域資源の魅力をより高める方策も生まれるかもしれない。

「西伊豆はわさびやだし、魚の干物など加工品、丸亀市は鶏肉や野菜といった生鮮食品が特産です。このように、持っている強みが異なったのが、よい相乗効果を生みました。またそれぞれの担当者の人間的な相性もぴったりでした。丸亀市の市長が『鈴木さんを仲人にお見合いをしてうまくいった』と話されていました。こういった出会いが、さまざまなプレーヤーの間で生まれることが日本百貨店さかばの目的なんです」(鈴木氏)

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