特に注目したのは、その「仲井遙」が発する関西弁の見事さである。私は、女優としての才能測定基準の1つに、方言の発音能力があると思っている。「言語的運動神経」の測定とでも言おうか。
そんな視点から、大阪出身の私は、関西を舞台としたドラマでの、俳優の関西弁をチェックするのだが、川栄李奈(神奈川出身)のそれは、ほぼ完璧だった。同じくNHK大阪制作の朝ドラ『ごちそうさん』(2013年)主演の杏(東京出身)や、『てるてる家族』(2003年)主演の石原さとみ(同じく東京出身)による関西弁のレベルをゆうに超えていた。
『ごめんね青春!』の「神保愛」と『アオゾラカット』の「仲井遙」に共通するのは、「どこにでもいる女の子」というキャラクターである。もう少し言葉を足せば、「どこにでもいる、パッとしない、心にちょっとした闇を抱えている女の子」。
それが川栄李奈の「普通力」。川栄がドラマの中にあらわれると、画面の中に「普通の風」が吹く感じがする。もちろんそれは川栄の素の力もあろうが、むしろ、素のように演じることができるという、本質的な演技力のたまものではないかと思う。
最近発売された『QJ クイック・ジャパン(vol.137)』(太田出版)の川栄李奈特集号に掲載されたインタビューでも、芝居が好きで好きでしょうがないことや、芝居を本格的にやるためにAKBを辞めたことなどを、はっきりと語っている。われわれの多くが思う以上に、川栄李奈の女優への意識は高いようだ。
川栄李奈の今後を分析してみる
では今後、川栄李奈は、女優として、どの方向に進んでいくべきなのだろうか。私はここで、川栄李奈を含む女優のグルーピングを試みてみたい。それは「23歳組」というくくり方である。
・松岡茉優:1995年2月16日生まれ(23歳)
・二階堂ふみ:1994年9月21日生まれ(23歳)
全員同学年の23歳。そして若手の中では「演技派女優」と言える3人である。ここから述べるのは、今後、川栄李奈には、松岡茉優や二階堂ふみと並び立つような女優になってほしいという、1人のエンタメファンとしての個人的願望である(余談だが「23歳組」には他に、広瀬アリス、早見あかり、清野菜名らがおり、さしずめ「演技派若手女優」界の「松坂世代」という感じだ)。
松岡茉優と言えば、まずはNHK朝ドラ『あまちゃん』(2013年)の「入間しおり」役であろう。ただ私にとって彼女は「映画女優」なのである。
傑作映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)の鬱屈した女子高生=「野崎沙奈」役の見事な演技。そして、何といっても、昨年末に公開された映画『勝手にふるえてろ』のおタクっぽいOL「ヨシカ」役の劇的なハマりっぷり。更には、カンヌ国際映画祭の最高賞であるパルム・ドールを獲得した『万引き家族』の風俗嬢「柴田亜紀」役など、まさに若手女優のリーダーとして、着々と地歩を固めつつある。
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