もう1人の二階堂ふみも絶好調である。今年2月公開の映画『リバーズ・エッジ』における、陰鬱な女子高生「若草ハルナ」役の体当たりの演技は忘れられないし、テレビでは、何といってもNHKの大河ドラマ『西郷どん』における「愛加那」役の迫真の演技は、本人にとってもエポックとなるだろう。
この、川栄李奈より一歩進んだ地点まで進んでいて、まさに「どこにでもいる、パッとしない、心にちょっとした闇を抱えている女の子」を見事に演じきる「23歳組」の2人に対して、川栄李奈はどうポジショニングしていけばいいのか。
そのヒントもやはり「普通力」ではないだろうか。
川栄李奈はどう勝負すべきか
松岡茉優も二階堂ふみも、先のフレーズの中では、「どこにでもいる」感よりも「ちょっとした闇」感を強めに演じるときに、独自の強力な魅力を放つ。だとしたら、その「ライバル」(と勝手にさせていただく)となる川栄李奈は、「どこにでもいる」感で勝負するのはどうだろう。
若者の目が、テレビや映画の画面から、スマホの画面に奪われている。私はこの変化を、構造的で不可避な変化だと考える立場だが、ただ、テレビや映画の画面が、「普通の若者のリアリティ」を十分に映し出しているとも言えないだろう。その結果、若者の目がテレビや映画から遊離したという見方も出来ると思う。
だから、「CMの女王」は、単なる経過点で良いと思う。川栄李奈には、「CMの女王」で得た知名度を武器としながら、その抜群の「演技力」「普通力」を活かして、テレビや映画の画面を「普通の女の子のリアリティ」でいっぱいいっぱいにしてほしいのだ。
この秋に公開される川栄李奈の主演映画『恋のしずく』で、川栄は「農大の理系女子」を演じるという。さらに期待されるのは、宮藤官九郎が脚本を手がける来年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』で、川栄は、神木隆之介演じる落語家の妻を演じるという。
「理系女子」と「落語家の妻」。川栄李奈の「普通力」を発揮するのに最高の役回りではないだろうか。また川栄自身が「共演したい」と熱望していた神木隆之介との取り合わせも、川栄に大きな刺激を与えるだろう。
まだたった23歳の女優3人が、その抜群の演技力で、日本のエンタメ界を面白くしていく。その中で川栄李奈は、その「普通力」で独自の存在感を築いていく。そして、日本のエンタメ界に、虚飾ではない「普通の女の子のリアリティ」を吹き込み、「CMの女王」から、「普通力の女王」になっていく――。
最後に、男性の「23歳組」を1人紹介しておこう――大谷翔平、1994年7月5日生まれ。「23歳組」は「松坂世代」ではなく「大谷翔平世代」だったのだ。だから川栄李奈には、大谷に負けないスケールまで、大きく高くはばたいてほしい。でも思いは高くとも、演技は普通に、普通に。
(文中敬称略)
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