国内生保・大手9社トップインタビュー--業界再編の行方は?
富国生命 秋山智史社長
過去の成功体験があるので再編の「予定」はありません
少子高齢化で限りなく保険ニーズが縮小していくと結論づけて、それを前提に考えるのは間違っている。創意工夫、やれることはあると考えています。日本の生保マーケットには、元本保証型変額年金保険という限定的な話とはいえ、外資系、損保系が新規参入してくるほどの魅力がまだあるのですから。徹底的にお客様のニーズ、欲しがっているものが何かを考えて提供できるかどうかが、ポイントと思っています。
当社では専業子会社で銀行窓販チャネルを育てているところです。販向け商品は、個人年金保険を販売していますが、近い将来、医療保険など保障性商品の提供も視野に入れています。ただ、市場で人気が集まっている元本保証型変額年金保険は提供しません。それを売ることが、当社の強みにはならないと考えているからです。元本保証型は生保会社の負担が将来的にものすごく大きくなる商品なのす。会社の継続に心配な要素が出てくるとしたら、それはお客様のためになる商品とはいえません。
富国生命本体での対面販売、フコクしんらい生命での窓販の2本柱の形はつくりました。次は中身の充実です。ポイントは、対面売の営業職員のスキルアップ、お客様と対話がきちんとできる人材の育成です。一方で窓販専門子会社は、最適な販売システムを早期に作り上げ、代理店の販売員にどれだけ保険商品について理解を深めてもらえるかがカギを握っています。個人的には保険料収入比率が本体5割、窓販5割になってもいいなと考えています。なかなか難しいでしょうが(笑)。
業界再編については、何があってもおかしくはない。とはいえ当社では「予定はない」と答えますけれども(笑)。
当社が「合併しないとやっていけない」というような考えにならないのは、過、時間をかけて取り組んだ施策が結果に結びついたという成功経験があるからです。
現在、当社は解約失効率が低い保険会社としての評価が高いと自負していますが、業界内で最も契約継続率が低い時代もありました。当時の経営者が入り口の契約時点の見直し、「解約したい」とお客様に言われたときの丁寧な対処など、改善策に取り組んだ結果、解約失効率が低い会社になった。すぐに結果に表れなくても、やったからこそ成果につながるのです。
メーカーにおける工場合理化、工程の見直し、新商品の発売などのように、すぐに劇的に変化する性質の改策はありません。ただ、地道に改善を続けてきたからこそ今がある。どこまでスピードを緩めることなく継続的にやっていけるか、これが大切なんですよ。