ダイハツが軽トラに最先端技術を載せた意味 ハイゼットトラックに衝突回避ブレーキ機能

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まずはコストの問題だ。たとえば、ダイハツのハイゼット トラックは車両本体価格が68万円台~139万円台で設定されている。軽自動車を含めていまどきの乗用車に比べると低く抑えられており、購入者側も少しでも安く買いたいというニーズが強い。そこにコスト高要因となる先進装備を入れたうえで、価格競争力を保つのは容易でないと想像できる。

もう一つの理由は、軽トラ固有の構造にある。軽トラは荷物を積んでいないと、フロントにエンジンと乗員の重さが偏っている。前方不注意や急な飛び出しなどで、衝突回避支援ブレーキ機能が緊急作動するような状況では、軽いリアが持ち上がって不安定になり横滑りしやすくなる。積荷を積んでいたとしても、その状況によっては、急ブレーキで左右のバランスが大きく崩れて横滑りを助長したうえで、積荷の荷崩れまで誘発する危険もある。

軽トラに衝突回避支援ブレーキ機能を入れるなら、それらの状況を想定して専用セッティングが必要となり、技術的な難易度が高い。だからこそダイハツはハイゼット トラックにスマアシを搭載するに当たって専用セッティングを施し、「スマアシⅢt」と名付けた。

体感試乗会の様子(写真:ダイハツ工業)

コストと技術面の問題をクリアして、軽トラの分野にも衝突回避支援ブレーキ機能の標準搭載を始めたダイハツ。ベースとなる「スマアシⅢ」は前方の車両だけでなく、歩行者も検知できる点にも注目だ。競合社もまったく無視はできず、追従する動きに発展するだろう。この流れは望ましいといえる。

衝突回避支援ブレーキ機能の搭載はもはや不可避な流れ

警察庁のまとめによれば、日本における交通事故の死者数は1970年の1万6765人をピークとして2017年は3694人まで減っている。ただ、このうち最も割合が高いのは歩行者の36.5%。同乗を含み自動車(33.1%)や2輪車(17.1%)に乗っている人よりも、自動車や2輪車にひかれた人のほうが多く亡くなってしまっている現実がある。

シートベルト装着の徹底やエアバッグの標準装備車種の拡大、衝突しても乗員を極力守るボディ構造、車両安定制御の各種技術などによって、自動車に乗っている人の生存率を上げるすべは進化した。一方で、次なる課題はいかに車に乗っていない交通弱者を守るのかにある。

さらに踏み込めば、今後の自動車社会の大きな課題は、身体的に認知・判断・操作に遅れが生じやすい高齢者ドライバーへの対応だ。

ダイハツによると、ハイゼット トラックユーザーの55%が60歳以上。しかも農業などの職業自動車として使い、家から比較的近い農作業現場への移動に合わせてスーパーなどへの買い出しなど日常の足として併用するケースが多い。乗車が子どもの通学時間帯に被るケースも多数見受けられる。

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