我も我も、日本の造船会社がブラジルに殺到 川崎重工業、IHIに続き三菱重工も出資

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しかし、ブラジルはFPSOやドリルシップに必要な造船技術が未熟なため、現地の造船会社が相次ぎ日本企業に技術支援と事業参画を要請。すでに昨年から今年にかけて、川崎重工、IHIグループが現地造船会社に出資を行った。三菱重工も昨年、エコビック社から「日本企業との提携で技術交流と生産性の向上を図りたい」(ジェルソン・デ・メロ・アルマーダ会長)と協力要請を受け、両社の間で実務協議を進めていた。

エコビックス社は、エンジニアリングや発電事業などを手掛ける現地ジャクソングループの造船会社。国営石油会社・ペトロブラス向けの海洋設備を建造するため、2010年に設立された。FPSO用の船体8隻、ドリルシップ3隻を受注しており、引き渡し実績はないが、同国南部にある造船所(従業員5000人強)で建造に取り掛かっている。

日本勢にとっても、事業参画のメリットは大きい。主力とする伝統的な輸送運搬用商船は、中国勢の台頭で事業の先行きが非常に厳しい。一方、近年は世界的な海洋油田開発の活発化に伴い、ドリルシップやFPSOなど洋上浮体式の原油開発・生産用設備の需要が急増。日本の造船会社はこうした海洋資源分野で完全に出遅れており、現地企業への経営参画により、巨大市場のブラジルで足場が築け、事業が軌道に乗れば配当などの形で果実が得られる。

実は、先に韓国勢がブラジルに接近していた

都内で開いた会見の席上、三菱重工の鯨井洋一・取締役常務執行役員(交通・輸送ドメイン長)は、「今回、日本で培ってきた技術をブラジルで展開するチャンスを得た。強力な現地企業と組むことで、海洋資源関連の事業を伸ばしていく。エコビック社をブラジルでトップの造船会社に育てたい」と意気込みを語った。

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