そして、和牛の質の向上で重要なのが各地にある畜産の研究所。宮崎、鹿児島、岐阜、岩手など各県に和牛だけでなく、畜産について大学の先生、研究者、生産者とともに研究している機関があります。和牛の品種改良、交配の仕方でよりよい和牛を繁殖させ、質のよい肉つくりのための肥育について研究をしています。
以前、海外の牛との交配で大失敗をした経験から、日本の牛だけにこだわり、遺伝的能力をもっとも重要な手掛かりに、地域の環境を考慮しながら、和牛の質の向上に取り組み、名種牛の誕生にも成功しています。
近親交配がちょっと心配
岐阜の飛騨牛のルーツと言われるのは、但馬牛の「安福(やすふく)号」で、その子孫は約4万頭。当時1000万円で購入した牛でしたが、安福号の血を継ぐお肉は今までの2倍、3倍の値がつくようになったというから、血統のチカラはすごい!
また、宮城の仙台牛の始まりは、これも但馬の「茂重波(しげしげなみ)号」。わが故郷、岩手の前沢牛も但馬牛がルーツです。そして、和牛界のスーパースターといわれているのが、鹿児島の「平茂勝(ひらしげかつ)号」。そのDNAは日本全国に行き渡り、なんと25万頭もの子孫を残したと言われています。
ただ、優秀な雄牛の遺伝子が日本各地で交配され多くの子どもが生まれるということは、血のつながった異母兄弟や親戚が全国にいるということ。和牛は、交配を繰り返して肥育するものなので、近親交配の弊害(病気になりやすい、子どもができないなど)が出てくることが懸念されているのです。
とはいえ、先もお話ししたように各県の畜産研究機関、生産者の間では、系統が混ざらない牛の発掘や、血統の追跡をするなど、課題の解決に向け研究が進められているようですので、今後の成果を注視していきたいと思います。
私の父は、馬喰(ばくろう=牛の売買、仲介をする仕事)をしていました。牛を見れば、肉質もすぐにわかってしまうような名人と言われていた人物です。その父がよく「牛の顔、体格を見れば、どの血筋の牛かすぐわかる」と言っていたので、改めて父の偉大さをこの原稿を書きながら思いました。まだまだ修業が足りませんね、肉おじさん、頑張ります!
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