「ゆる鉄」中井精也が駅前に画廊を開いたワケ 東京・三ノ輪に開店、商店街も元気になった

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鉄道写真家としては珍しく、プロになってから仕事で電車のアップの写真を撮るようになったという中井さん。「ゆる鉄」については、自分がこれだと思って撮ってきた写真が受け入れられたことで、無理せず続けてこられたことが幸運だと話す。
そんな中井さんは、オープンした「ゆる鉄画廊」のショーウインドーに、大好きな写真を飾ったという。

 

「ベトナムの少女」(撮影:中井精也)

「入り口のショーウインドーには僕の大好きな写真が飾ってあります。ベトナムの女の子の笑顔の写真です。実は少しピンぼけなのですが、そんなのは関係なくて。あの子と僕は喋ったこともなかったけれど、カメラを向けたら気づいて笑ってくれました。僕はそのときファインダーを覗きながら泣きそうになったんです。あの笑顔は僕に向けた笑顔だけれど、写真を通して、写真を見た人に笑いかけてくれているような力を持つのです」

カメラは撮るだけではなく、伝えるツール

「カメラは撮るだけではなく、伝えるツールです。誰も見てくれないなら写真なんて撮らない。人とつながりたい、伝えたいという思いがあるから、写真を撮るのです」

「写真にはいろいろな力があります。戦争や震災のような悲惨な現場の真実を伝える力もあります。おいしくもない料理や、キレイでもない女性をすばらしく写す嘘っぱちの力もあるでしょう。でも僕は、写真を通して癒やされたり笑顔になったりする力を信じたい。だから子どもとかおばあちゃん、ローカル線の写真が多くなります。逆に悩みもあって、パリやミラノで鉄道のカッコいい写真も撮ってくるのですが、意外なほど売れないんです。僕はいいなと思って撮っているんですけれど、『ゆる鉄』のイメージじゃないからでしょうかね(笑)」

満面の笑顔で敬礼する中井さん(筆者撮影)
ゆる鉄画廊
〒116-0003 東京都荒川区南千住1-19-3
ジョイフル三の輪商店街 大勝湯となり
定休日:火・水
電話:03-6806-5741 FAX:03-6806-5742
https://garou.ichitetsu.com/
谷口 礼子 俳優・ライター・旅人

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たにぐち れいこ / Reiko Taniguchi

1983年、神奈川県生まれ。早稲田大学文学部卒。女優。所属劇団・シアターキューブリックは、今年7月、千葉県銚子市を走る銚子電鉄を舞台にしたローカル鉄道演劇『銚電スリーナイン』を上演予定。

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