「ゆる鉄」中井精也が駅前に画廊を開いたワケ 東京・三ノ輪に開店、商店街も元気になった

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ギャラリー内に展示されている写真の数々(筆者撮影)

「僕は『ゆる鉄』という言葉を使って、鉄道沿線に漂っている『旅情』とか『ゆるい雰囲気』を被写体にした作品を撮っています。

『旅情』とか『ゆるい雰囲気』は目には見えませんが、どうやって感じてもらえるか、というのが、難しくて面白いところです。車両を小さく写したり、ぼかしたり、場合によってはなくすことで、目に見えないものが写真に宿る。そのための工夫をどうするか、と考えて撮っています」

商店街はふるさとの風景

中井さんは、杉並区の阿佐ヶ谷出身。ギャラリーを構えた三ノ輪橋の「ジョイフル三の輪商店街」は、子どもの頃の街の風景にそっくりなのだという。

懐かしいイメージが残る三の輪商店街の風景(筆者撮影)

「東京生まれの東京育ちである僕にとって、ふるさとの風景はまさにこの商店街のような景色です。路地があって、都電の線路際の道にバラが咲いていて。ふるさとの景色はとても落ち着きますよね。東京下町の風景がここまで強く残っているところはなかなかないと思います。僕にとっては理想の場所です」

オオムラパン(筆者撮影)

「商店街のよさは、個人店のよさ。プロが自分の得意とする商品を並べ、商店を構えて、誇りを持って朝から晩まで働いています。それこそ何十年も。自分がこれだと思うことを続けていくことはなかなかできることじゃない。最近は商店街も高齢化していて、シャッター通りが増えています。でも、今回僕がお店を始めたことでそのシャッターのひとつが開いて、光がついて、なかったものができました」

中井さんおすすめのハムカツパンを売るパン屋「オオムラパン」には、中井さんの写真の卓上カレンダーが飾られている。パートの店員さんが笑顔でこんなことを話してくれた。

「商店街に今まで来なかったような人が増えました。客層が変わったというのかな。うちの奥さんも写真を買ったと言っていましたよ」

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