凶悪事件を起こす「少年少女A」たちの共通点 新潟少女殺害事件はなぜ防げなかったのか
7、殺人にまで至る大きな事件の直前に、重要なシグナルがあった点
事件の前、小林容疑者は山形県内に住む14歳の女子中学生にわいせつな行為をしていた。そして、この女子中学生を新潟県上越市内で連れ回したとして、4月に新潟県警上越警察署が、新潟県青少年健全育成条例と児童ポルノ禁止法違反の疑いで小林容疑者を書類送検していたことも判明した。
問題なのは、勤めている会社をはじめ、加害者の周囲にいる人たちがその事実を知らなかったことである。
小動物を何匹も切り刻んでいた少年A、教え子の女子生徒にストーカー行為を繰り返していた塾講師など、凶悪事件の実行前には、表ざたにならない未遂事件を起こしているケースが少なくない。
そうした行動の結果が予想したものと違ったり、未遂に終わった場合は不満を感じ、こだわりがさらにエスカレートしていってしまう傾向がある。そして「何がなんでも完遂しなければ」という強いこだわりに変わり、抑制が効かず、感情が抑えきれなくなって大きな悲劇が起こっている。
8、家族がシグナルを察知していても行動に移せなかった点
家族の一員、ましてや子どもが事件を起こしてしまった場合、親としてはできるかぎり外に情報が漏れないように、隠そうとする意志が働くケースは少なくない。もし、それが明らかになれば、地域社会では生活しづらくなってしまうからだ。過去の少年事件では、親が地元で名のある人物であったことで、シグナルとなった未遂事件をもみ消してしまい、残念ながらその後に悲劇的な事件につながってしまった例もある。
2005年に実の母親にタリウムを混入して飲ませた様子を観察していたという「静岡タリウム殺害事件」も、家族は、犯人は自分の娘(当時16)ではないかという疑念を抱いていたのだが、まさか、ということでその疑念を否定してしまっていた。
強固に働く正常性バイアス
残念なことに今回の事件でも、子どもを疑う様子は見受けられなかったようだ。事件発生当時、小林容疑者の親は近所の人に「早く捕まればいい」と言っていたことが明らかになっている。自分の子どもを信じたいという思いが強く、世間体や風評を気にするあまり、シグナルに気づいていても早期に対応するという行動を取りにくかった側面もあったのかもしれない。
以上、これまでの青少年による凶悪犯罪事件にみる共通点を挙げた。凶悪な少年犯罪を起こす加害者の特徴、また、重大な事件を引き起こすまでの経緯上の問題点について認知と理解が進むことを願う。
経緯については、小林容疑者が直近で女子中学生を連れ回した件で逮捕されていれば、悲劇は起こらなかったのではないかという指摘は少なくない。事件1カ月前の犯罪で、なぜ身柄拘束ではなく書類送検だったのだろうか。警察は理由を公にするべきではないか。
二度とこういった痛ましい事件が起こらないためにも、一刻も早い真相の究明と、今後の再発防止のためのシステムの構築が望まれる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら