「泉北ライナー」乗車率アップへ次なる策は? 朝の列車は「ニュータウンの足」として定着

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泉北線は大阪府などが出資する第三セクター、大阪府都市開発(OTK)が運営していたが、府が2014年に同社を南海電鉄に売却し、現在は南海電鉄の子会社・泉北高速鉄道となっている。OTKの売却公募に南海電鉄が応募した際、同社は大阪府に提示した買収提案の中で、「当社が買収すれば、有料特急の運行を実現できるなど、相互直通運転を行う事業者としてのメリットをアピールした」(遠北社長)という。つまり、南海電鉄による泉北高速鉄道買収が決定した時には「泉北ライナー」の運行はすでに既定路線であったのだ。

そして、運行開始から1年9カ月を経過した2017年8月26日には増発が実現し、2年を超えた現在では、泉北線沿線の「通勤ライナー」としてしっかり定着した。遠北社長は「和泉中央駅平日7時31分発『泉北ライナー64号』の乗車率は90%台後半で、満席になる日もある」と説明する。

「泉北ライナー」のほかにも南海電鉄は、泉北線沿線の価値向上に向けた積極策を次々と実行に移している。南海電鉄の2015~2017年度の経営計画「深展133計画」では、「泉北関連事業の強化」として、輸送サービスの利便性・快適性の向上、中核エリア(泉ケ丘駅前地区)の魅力・集客力向上、泉北エリアへの居住・来訪促進、物流事業の収益基盤拡充、効率化と競争力の強化を掲げていた。

運賃割引で南海線内とほぼ同額に

「泉北関連事業の強化」は、南海電鉄が2014年6月6日に公表した「大阪府都市開発株式会社の株式取得について」がベースとなっている。この文書の中で同社は「運賃値下げをはじめとする利便性向上策の実施を通じて、泉北ニュータウン等の沿線活性化に貢献する一方、鉄道・バスをはじめとする運輸事業を中心に、不動産・流通事業を含めた当社グループとの連携によるスケールメリットを発揮し、駅ナカビジネス拡充等の増収策とコスト削減策によって、強靭な事業構造の構築を図ってまいります」と説明していた。

まず運賃割引については、2015年3月1日から大人の運賃乗継割引額を従来の20円から100円へ拡大させるとともに、泉北線内各駅相互間(全区間)における通学定期旅客運賃について約25%値下げを実施している。

遠北社長は「この割引額拡大によって、普通運賃は、南海高野線内のみ利用の場合と、南海高野線・泉北線の乗継利用の場合とが、ほぼ同額になった」と説明する。たとえば、難波駅―和泉中央駅間(27.5km)の 大人片道運賃は乗継割引適用で550円であるが、ほぼ同距離の難波駅―河内長野駅間(27.1km)の 550円と同額となっている。

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