「泉北ライナー」乗車率アップへ次なる策は? 朝の列車は「ニュータウンの足」として定着

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「泉北ライナー」はまさに、南海高野線と泉北線の一体的運営が可能となったからこそ実現できたのであり、相乗効果を発揮できる列車であるといえる。追加料金を支払えば着席通勤・通学ができるという新たな選択肢を泉北線で生み出した意義は小さくない。泉北線沿線住民は「泉北ライナー」を利用してゆとりのある移動時間を享受することで、自己啓発や出勤前の鋭気を養う時間に充てることができるようになった。そして何より、一般列車だけだった泉北線に看板列車が走る効果は非常に大きいと考えられる。

乗車率向上へ次の策は?

「泉北ライナー」が定着したいま、次の課題は乗車率をさらに高めるための施策を考え、実行に移すことだ。たとえば、南海空港線の特急「ラピート」は泉佐野駅―関西空港駅相互間のレギュラーシート料金を100円に設定しているが、「泉北ライナー」も同様に、泉北線内相互間の料金を100円にしてはどうだろうか。

さらに、地下鉄御堂筋線との接続駅である中百舌鳥駅を停車駅に追加することも一案と考える。御堂筋線への乗客流出を懸念して通過させるのではなく、むしろ御堂筋線への乗換客にも「泉北ライナー」の利用機会を提供し、快適性や利便性を体験してもらうことで、南海高野線の直通利用へ誘導する効果を見込めるだろう。

関東では、2006年3月18日、東武鉄道の特急「りょうもう」の一部列車が、JR東北本線と接続する久喜駅への停車を開始した。利用者がJRに流れることを懸念するよりも、「りょうもう」の活性化を優先させた措置であったが、JRの久喜駅以南と東武線の同駅以北の間を利用する旅客に特急利用が可能となる形で恩恵がもたらされた。そして2017年4月21日には、特急「りょうもう」と特急「リバティりょうもう」の全列車が久喜駅に停車するようになった。

東武鉄道の事例と単純な比較はできないが、「泉北ライナー」を中百舌鳥駅に停めることを通して、顧客とのタッチポイント(接点)を増やすことが、泉北線の利用促進と沿線の価値向上につながると考えられる。

2月28日、南海電鉄は「満足と感動の提供を通じて、選ばれる沿線、選ばれる企業グループとなる」を目標とする「南海グループ経営ビジョン2027」および新中期経営計画「共創136計画」を公表した。基本方針として、(1)安全・安心で良質な交通サービスの提供、(2)なんばのまちづくり、(3)インバウンド旅客をはじめとする交流人口の拡大、(4)駅を拠点としたまちづくり、(5)不動産事業の拡充を掲げている。同社のさらなる沿線価値向上および成長を実現するための取り組みについても、いずれ紹介したい。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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