日本と海外でこんなにも違う高速道路事情 最高130km/hが出せる国も少なくない

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5月3日配信の「高速道のSA・PA、思わず目を見張る最新進化」で日本の高速道路の休憩施設がここ15年ほどで大きく変わってきたことを伝えたが、欧米諸国のサービスエリアはあまり大きな変化はない。

トイレやガソリンスタンドなどの必須施設のほかにビュッフェ・レストランや売店が併設されているのは、日本のサービスエリア革命以前から変わらないが、近隣の産品や土産物が何十種類も売られていたり、ご当地グルメが味を競ったりしているようなことはなく、どちらかというと地図やスナック菓子のようなドライブのお供として実用的なものを中心に扱うケースが多く、店を見て回る楽しみはあまり感じられない。

それでも、休憩施設にはお国柄がにじみ出るもので、モロッコのサービスエリアには、イスラム教徒がメッカに向かって祈るための礼拝室が用意されていたり、ジブラルタル海峡経由でスペインへ渡るフェリーのチケットを売るブースが設けられていたりするなど、北アフリカのイスラム国らしさに溢れていたのが印象に残っている。

途上国でも発展著しい高速道路

高速道路は今も世界中で建設されている。すでに網の目のように発達したヨーロッパでも、旧東欧諸国では今も建設が進んでいるし、アジアや中南米での建設は、今後さらに加速するだろう。

中国・広東省を貫く高速道路(2017年1月 筆者撮影)

高速交通網の充実が目を見張る中国では、高速鉄道の路線総延長が今や世界一になったのと同様、高速道路の総延長も2017年7月に13万1000kmとなって、アメリカを抜いて世界一になったと中国の交通運輸省が明らかにしている。実際、かの国を訪れるたびに、計画中だった高速道路が開通しているのを目にし、その計画の進展のスピードやインフラの充実ぶりに驚かされる。

中国では、日本の正月に当たる春節の民族大移動で、鉄道が大混雑する映像が毎年の風物詩のようにニュースで伝えられるが、今の調子で自動車の普及が続くようだと、その風物詩は早晩、高速道路の大渋滞の映像に取って代わられるかもしれない。

人々や物資を隅々にまで運ぶ地球の動脈の役割を担っているといってよいほど、高速道路は現代の物流網の中心の座を占めてきていることを、海外での走行のたびに実感する。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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