エスティマやキューブが全面改良しないワケ 長く作り続けなければならない車種の悲哀
■コンパクトカー/日本の市場に合ったカテゴリーなのに、設計が古く売れ行きが低迷
日産「キューブ」は全長が4m以下のボディで運転がしやすく、背が高いから4名で乗車しても快適だ。内装は和風をテーマにした柔和な形状で、独特のリラックス感覚が漂う。今のクルマには怒ったようなフロントマスクで、周囲の車両を蹴散らすようなデザインが多いが、キューブの顔立ちには協調性がある。表情が優しく、多くの人やクルマが行き交う街中に相応しい。
そのために発売当初は人気が高く、小型/普通車の販売ランキングでトップ15位以内に入ったが、10年近くを経た今は40番手前後だ。1カ月の登録台数も500~600台だが、稀に特別仕様車を設定すると1000台前後に達するから、今でも魅力を感じるユーザーが多い。
そうなると次期型の開発が望まれるが、かつて着手したものの凍結されたらしい。キューブも国内向けで今後の需要を予測しにくく、日産の方針も大きく影響した。今はダイハツを除くと、各社ともに世界生産台数の80%以上を海外で売り、日産は特にこの傾向が顕著だ。世界販売台数に占める国内比率は、三菱やスズキが製造する軽自動車を含めても10%にとどまる。自社生産する小型/普通車に限れば7%程度で、日本はオマケの市場になりつつある。
日産の社名は「日本産業」に由来するが、今は日本国内を空洞化させ、設計の古い車種が増えて、セダンの「スカイライン」や「シルフィ」は海外向けだ。その結果、既存の日産車を使う人達の乗り替え需要がコンパクトカー「ノート」に集中して、売れ行きを伸ばした。ミニバン「セレナ」、軽自動車「デイズ」「デイズルークス」も同様で、それ以外の車種はサッパリだから、国内の販売順位はトヨタ/ホンダ/スズキ/ダイハツに次ぐ5位になってしまう。
安全装備などに古さが散見される
■セダン/セダン比率の高いトヨタが消極的になって古い車種が増えた
トヨタ「マークX」はトヨペット店の専売となる主力車種で、かつて高い人気を誇ったマークIIの後継だが、エンジンは設計の古いV型6気筒で済まされた。同じプラットフォームを使うクラウン(従来型)は、ハイブリッドや2Lターボを搭載するのに、マークXは古い状態で放置されている。
トヨタはクラウンとカムリに力を入れてマークXは現行型が最後らしいが、比較的コンパクトな後輪駆動セダンだから、日本の道路環境と市場に合っている。フルモデルチェンジをすれば日本で売れる見込みのある商品が、見捨てられるのは残念だ。
同じトヨタのプレミオ&アリオンも同様だ。今は5ナンバーサイズのセダンは、プレミオ&アリオン、トヨタ「カローラアクシオ」、ホンダ「グレイス」に限られる。この中でプレミオ&アリオンは、グレイスと並んで後席が広く、水平基調のボディは視界が良いから運転しやすい。日本に最適なセダンなのに、商品開発が海外中心になってフルモデルチェンジを受けられない。今では走行安定性、シートの座り心地、安全装備などに古さが散見される。
セダンの車種数は、トヨタが圧倒的に多い。そのためにトヨタが国内向けのセダンを見限ると、選択肢の不足に直結する。日本のセダンユーザーのために踏ん張って欲しい。
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