エスティマやキューブが全面改良しないワケ 長く作り続けなければならない車種の悲哀
■ミニバン/需要の先行きが不透明で、腰の引けた小規模な改良で済ませる
フルモデルチェンジを受けずに長く生産される理由は、車種の置かれた状況やカテゴリーで異なる。
トヨタのミニバン「エスティマ」は、高級乗用車の新しい姿を問い掛ける車種として1990年に初代モデルを発売した。2000年に2代目になり、2002年には同じプラットフォームを使う初代「アルファード」が誕生している。2006年には3代目になり、アルファードも刷新されて、姉妹車の「ヴェルファイア」が加わった。
ところがこの後は状況が変わる。アルファード&ヴェルファイア(アル/ヴェル)は2015年にプラットフォームを刷新するフルモデルチェンジを受けたが、エスティマは2006年に発売されたままで、発売後10年を経ながらマイナーチェンジを実施した。
エスティマの人気動向が不透明
背景にあるのは、ミニバンの売れ行きと、エスティマの人気動向が不透明なことだ。少子高齢化もあり、ミニバンが今後も堅調に売れるとは限らない。10年前に比べるとミニバン市場は縮小して車種の数も減った。
そしてエスティマは、ミニバンの実用性と併せて初代モデルから続く卵型の外観に特徴があり、この形状が飽きられると販売が急落する心配が伴う。デザインの賞味期限を見極めにくく、フルモデルチェンジに踏み切れない。
その一方でヴェルファイア&アルファードは販売が好調で、広く豪華な車内を高級セダンの代わりに使うユーザーも増えた。海外を含めて需要が見込めるために一新され、エスティマは据え置かれた。
それでもエスティマは1カ月に1000台前後を安定的に売るから、廃止するのも惜しい。その結果、発売から10年を経てマイナーチェンジを行う中途半端な展開になった。
仕方ない成り行きにも思えるが、エスティマのフルモデルチェンジを待つユーザーには、トヨタのやり方は腰が引けた印象を与えるだろう。売れる見込みがあって改良を施すなら、アル/ヴェルと共通のプラットフォームを使って、フルモデルチェンジするのが望ましい。
そうなれば新型エスティマは、走行安定性、乗り心地、居住性、歩行者検知の可能な緊急自動ブレーキまで、機能を幅広く向上できる。これらの特徴をアピールして、売れ行きを回復させる心意気が欲しい。
デリカD:5やエルグランドが古いのも、売れ行きが伸び悩んだからだ。販売台数が少ない状況で、赤字を出さずに開発費用を償却するには、長く造り続けるしかない。
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