MLBでは1997年から両リーグのチームが対戦する「インターリーグ」が行われている。この開始から昨年までのリーグの勝敗は以下の通り。「ア-ナ」は、アメリカン・リーグの勝数からナショナル・リーグの勝数を差し引いた数値だ。
過去21期で、アメリカン・リーグがナショナル・リーグに17期勝ち越している。2004年からは、14期連続でア・リーグが勝ち越している。
MLBのインターリーグは、当初、NPBと同様、期間を決めて集中的に行われていたが、2013年に両リーグの球団数が15球団ずつになってからは、シーズンを通じてインターリーグの試合が組まれるようになった。
またNPBの交流戦と違って、相手リーグの球団とは総当たりで対戦カードが組まれるわけではなく、エリア的に近いチームを中心に恣意的に対戦が設定されている。そういうこともあって、リーグ対抗の勝敗はほとんど注目されないが、集計してみるとアメリカン・リーグが圧勝しているのである。
NPBのパシフィック・リーグ、MLBのアメリカン・リーグ、交流戦、インターリーグで圧勝しているのは、いずれも「指名打者制」のあるリーグだ。
DH制の採用によりリーグの選手育成方針が異なった
DH(Designated Hitter)と呼ばれる指名打者は1973年にMLBのアメリカン・リーグで導入され、1975年にはNPBのパシフィック・リーグでも導入された。ア、パ両リーグはともに観客が低迷し、その打開策として投手の代わりに指名打者が打席に立つ指名打者制度が導入されたのだ。
この制度が観客増に貢献したかどうかは意見が分かれるところだが、以後、ア、パ両リーグは四十数年間、DH制を維持してきた。投手が打席に立たない野球は完全に定着した。
DH制を採用しなかったナショナル・リーグ、セントラル・リーグは、伝統ある名門チームが多い「古いほうのリーグ」である。新興のアメリカン・リーグ、パシフィック・リーグへの対抗心もあって、採用しないままにここまでやってきた。
この間に両リーグの戦い方、選手育成の方向性は異なったものになった。
DH制のあるリーグが、ないリーグより強いのは、四十数年間で培われた2つのリーグの「野球の質」の差異によるものと筆者は考えている。
細かく見ても、DH制があるチームのほうが強いのは明白だ。
DH制があるチームは、「9人の打者」を整備するのが基本だ。8つの野手のポジションに加え、守らない打者も1人用意する。DHは、たとえばベテラン野手が守備に就かず打席にだけ立つ「半休」にも使える。守備がお粗末だが、打撃には見るべきものがある選手の「使いどころ」にもなる。
また、投手に打順が回ってこないことで、指揮官は純粋に「投球内容」だけを見て投手を交代させることができる。投手起用のプランがより明確になる。
DH制がないチームは「8人の打者と1人の投手」で打線を組む。また投手は、好投していても変えざるをえない状況が出来する。それが前提になる。
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