国会最終盤は「なんでもありの遭遇戦」になる 米朝会談中止は「政権運営にプラス」の見方も

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働き方改革関連法案を審議してきた厚生労働委員会は25日午前、審議を再開したが、同日中の採決に反対する立憲民主など野党側が加藤勝信厚労相の不信任決議案を提出したため審議が中断。与党は同日午後の衆院本会議で同不信任案を否決したうえで厚労委を再開し、与党と日本維新の会、希望の党との法案修正も含めた関連法案を、与党と維新による賛成多数で可決した。与党は29日の衆院本会議での関連法案の可決・衆院通過を目指している。

関連法案の会期内成立を狙う与党は、5月中の参院での審議入りを「前提条件」として、委員会採決に踏み切った。「審議不十分」と反発する野党側は、25日夕刻の厚労委での法案採決の際は、野党の女性議員が委員長席を取り囲んで与党側議員の動きをけん制。激しい野次と怒号が飛び交うなど混乱したが、採決は短時間で終わり、予想より早い午後6時前に委員会は散会となった。

次の戦いの場となる29日の衆院本会議をはさむ形で、28日は首相も出席する衆参両院予算委での集中審議、30日には1年半ぶりとなる党首討論の開催が決まっている。このため、29日の本会議での野党の物理的抵抗や審議拒否は困難なのが実態だ。与党は月内に働き方改革関連法案の参院審議をスタートさせる一方、カジノ関連などの与野党対立法案も審議を進め、いずれも会期内に成立させたい考えだ。

ただ、森友問題での大阪地検の捜査終結も目前とされ、10カ月間も勾留されていた籠池泰典同学園前理事長夫妻は25日夕に釈放され、夫妻の記者会見が同夜に行われた。籠池夫妻はやつれた表情ながら40分間近く質疑に応じ、「昨年の証人喚問で虚言は何も言っていない」と力説し、首相に対しては「為政者は本当のことを言うべきだ」と語った。ただ、今後の公判を念頭に「具体的なことは差し控えたい」と森友問題の細部についての具体的発言は控えた。

一方、地検捜査終結とタイミングを合わせる形で、公文書改ざん事件に関係する財務省の職員の処分や、空席となっている財務事務次官、国税庁長官のツートップ人事決定も予想される。

財務省の最高責任者である麻生財務相は25日午前の記者会見で財務省による交渉記録の廃棄について「極めてゆゆしきことであり、深くおわびする」と謝罪し、今後の調査結果をふまえて佐川宣寿前国税庁長官や関与した職員を処分する意向を示した。その一方で、自らの責任については「一連の問題にきちんと対応することをもって、引き続き職責を果たしていきたい」と改めて辞任を否定した。

ただ、北側一雄・公明党中央幹事会長が24日の記者会見で麻生氏の責任について「調査がそれなりになされたところで、当然、そうした問題は出てくる」と指摘。首相が麻生氏続投での"中央突破"にこだわれば、与党内からも不満や不信が噴き出す可能性がある。

米朝会談中止は「政権運営にプラス」の見方も

そうした中、24日深夜(日本時間)ドナルド・トランプ米大統領が6月12日に予定されていた金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との歴史的な米朝首脳会談の中止を公表した。同大統領が金委員長に「会談中止」の書簡を送ったもので、ここにきての北朝鮮側の挑発的な言動に大統領が激怒したのが理由とされる。ただ、北朝鮮は大統領の中止表明の直前の24日午後に、外国メディアにも公開する形で北東部にある核実験場の爆破を実施しただけに、北朝鮮側は反発し、国際社会にも驚きと不安が広がった。

ただ、「対話のための対話」には反対してきた日本政府にとっては、「ある程度読み込み済み」(首相側近)との声も少なくない。首相は「圧力一辺倒」で米中韓と北との協議からは「蚊帳の外」に置かれている、との批判を受けていただけに、「会談中止で再び緊張感が高まることは政権運営上プラスにもなる」(自民幹部)との見方もある。

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