賞味期限切れの「北朝鮮」、先は悪材料ばかり? やはり「セルインメイ」なのか

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加えて2018年はアメリカの中間選挙というビッグイベントがある。中間選挙対策として、ドナルド・トランプ大統領は通商政策に奔走している。こうした政策を行ったのは、トランプ大統領だけではない。「アメリカ人の職を奪っている外国に対し、強気な外交を展開する」パフォーマンスは集票につながるため、過去にも通商政策は、中間選挙を盛り上げる常套手段となってきた。

1993年に成立したビル・クリントン政権は、1994年3月に通商法のスーパー301条を復活させ、不公正な貿易慣行に対する協議を行って、是正されない場合には報復措置を取るとした。この矛先は日本に向けられ、日米包括経済協議はその後2年間にわたって継続。2万2000円近くあった日経平均は一時1万4200円まで下落、為替も1ドル=110円程度から79円程度まで円高が進んだ。

2001年発足のジョージ・W・ブッシュ政権でも同様の動きがあった。この時のターゲットは中国で、2002年3月に鉄鋼のセーフガードを発令した。最大30%もの関税引き上げや、数量割当を課している。

トランプ大統領も過去の例を踏襲しているといえる。

これまで、トランプ大統領のターゲットとなっているのは、米国の貿易赤字の相手国として金額トップの中国と2位のメキシコだ。3月にはアルミと鉄鋼への追加関税を導入。中国に関しては、米国の追加関税に対して中国側も報復関税を発動するなど、米中貿易摩擦が激しさを増している。足元では中国の通信端末会社・ZTEに対する部品供給禁止解除に向けて交渉を行うなど、緩和的な話題も出てきているものの、難航しそうだ。メキシコについても、17日USTR(米通商代表部)のロバート・ライトハイザー代表が「合意には程遠い」との声明を出しており、合意の見通しは立っていない。

ここへきて、トランプ大統領は23日には安全保障を理由に自動車や自動車部品に関税をかけることを検討する、そのための調査を開始する、と表明した。すなわち、次にターゲットとなるのは米国の貿易赤字相手国3位の日本になる可能性が高い。今後の世論調査で支持率が低ければ、そうした動きはさらに加速するだろう。1993年からの日米包括経済協議のように交渉が長引くようであれば、円高、株安の流れは決定的となる。

FRBの引き締めとアベノミクスの終焉

米国経済にも変調の兆しが見える。長期金利は3%を超えており、FRBの利上げは年4回となる(年内あと3回)可能性が出てきている。これまで続いてきた大規模緩和はすでに縮小に入っているが、引き締めに向かってゴルディロックス相場も終わりを告げる。

トルコ・リラの下落に象徴されるように、米国の長期金利上昇で新興国にあふれていたリスクマネーの巻き戻しも始まっている。BIS(国際決済銀行)の統計によると新興国の民間債務は対GDP(国内総生産)比率で、2006年末の約74%から2017年9月末には約128%に膨らんでいる。その逆流が始まれば影響は大きい。

国内に目を転じると、9月には自民党総裁選が控えている。しかし、足元の政局混乱が続き、安倍晋三首相の3選が危ういとなれば、アベノミクスも終焉を迎えることになろう。自民党内の他の有力候補はアベノミクスの見直しを主張しているからだ。

こうした要素が重なるとすれば、夏から秋にかけて株安、円高の流れに代わっていく可能性は高い。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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