朝鮮半島全域が「中国の勢力圏内」に収まる日 「現状維持」が日本にとって最も望ましい

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もしアメリカが在韓米軍を撤退させた場合、アメリカに代わって東アジアにおける勢力圏を拡大するのは中国だ(写真:Xie Huanchi/Xinhua via REUTERS)
4月27日、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、板門店で会談し、「板門店宣言」に署名した。同宣言では、「完全な非核化により、核のない朝鮮半島の実現という共通の目標」を確認し、1953年から休戦状態にある朝鮮戦争の「終戦」を今年中に目指すとした。
日本は地政学的にどのような立場になってゆくのか、またどう動くべきなのか。著書『富国と強兵 地政経済学序説』で地政経済学を用いてポスト・グローバル化へ向かう世界覇権のゆくえを読み解いた筆者が徹底分析する。

日本は地政学的な不利に追い込まれる

板門店宣言には、各国からおおむね歓迎の意向が示される一方で、北朝鮮の非核化については懐疑的な見方も少なくない。

また、わが国にとっては、日本人拉致問題という重大な懸案も残されたままである。多くの日本人が板門店宣言を字義どおりに受け取ることができないのも、当然であろう(「歴史的な首脳会談、主要国はどう反応したか」)。

しかし、もし北朝鮮が非核化を反故にした場合には、今回は、アメリカが北朝鮮に武力攻撃を仕掛けるという危険性が飛躍的に高まってしまう。強硬派のジョン・ボルトンを国家安全保障担当補佐官に据えたトランプ大統領なら、確かに武力攻撃もやりかねない(「南北首脳会談、『終戦宣言』がマズすぎる理由」)。

イラクやリビアの体制崩壊がもたらした混乱と周辺国への波及を見れば、アメリカによる北朝鮮への攻撃が日本に悪夢のような事態をもたらすことは想像に難くない。したがって、われわれ日本人としては、板門店宣言に掲げられた事項の実現に懐疑的ではあっても、それを願わざるをえないというところかもしれない。

しかし、ほとんどの人が見逃していることだが、実は、この板門店宣言がうたう朝鮮半島の非核化や朝鮮戦争の終戦が実現した場合には、日本は地政学的な不利に追い込まれ、安全保障上の脅威が高まってしまうという可能性があるのである。

このことを明らかにするためには、まず、理論から説き起こす必要がある。

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