なぜシンガポールでは「有休取り放題」なのか 日本人ももっと「長期休暇」が取れるはずだ
いわゆるホワイトカラーがこのようにメリハリをつけて働く一方で、月収9万円程度で働く現場系の人たちもたくさんいます。日本から来たばかりのころ、部屋に不備があって配管工などに仕事をお願いしましたが、残念ながら、約束の時間を守らない、道具を持ってこない、部屋を水浸しにしたり、粉まみれにして足跡をつけたまま帰る、といったことは日常茶飯事でした。また、飲食店でまだ食べている途中でもスタッフが平気でお皿を下げてしまうこともよくあります。店先に貼られている時給600円程度でのアルバイト募集を見ると、「この額では多くを求めても仕方がないのかな」と思ってしまいます。そうした人たちの立場に立ってみると、「これだけしかもらっていないのだから、ここまでしかやらない」というスタンスなのです。お客も「低価格なのに高品質」までは求めていないので、それでも成り立ってしまうのでしょう。
「低価格なのに高品質」をやり過ぎると自分の首を絞める
このように、シンガポールのほとんどの人は十分に余暇が取れて、仕事のストレスが相対的に少ないからでしょうか、他人に親切で優しい印象を受けます。電車や街中でイライラしている人が圧倒的に少なく、東京でよくある車内でのケンカなどはほとんどありません。障害者や子連れに手を差し伸べる人がとても多いのにも驚かされます。
こうした日々を送っていて思うことは、「もっと日本企業も有給休暇をより取りやすい空気にし、残業を減らす方向に変えるべき」だということです。また、外食などのサービス業での「低価格なのに高品質」に慣れすぎている消費者が、過度にそれを求めることをやめなければ、労働条件の改善は実現できません(日本のサービスはすばらしいのですから、取れるところは取って、もっと価格を上げるべきです)。そうしないことには、値段が上がらず、給料も上がらないという悪循環から抜け出せません。
こう言うと、「物やサービスが売れなくなる」「それはきれいごとで、仕事が回らなくなる」と思われるかもしれません。しかし、シンガポールの1人当たりGDP(2017年)は9位(5万7713ドル)と、日本の25位(3万8439ドル)よりもずっと高く、日本より生産性が高いことがわかります。
日本の商品やサービスは良い割に値段が安すぎます。まずは、「値段を上げる」、もしくは「過剰なサービスを削る」などをして労働環境の改善をどんどん進めるべきです。
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