コナンも驚く日本の「私立探偵」の地味な実態 犯罪の真相解明などはほぼ行っていない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

3日間にわたって祖父母は彼らの息子のアパートから見えない位置で隠れて待機し続けた。孫を確保する機会をうかがっていたのだった。息子とその妻、そして孫がついに姿を見せた時、小山の依頼人夫婦は息子と対峙した。続いて起こった路上での口論は2時間続いた。

祖父母の姿を見て、孫はすぐに大好きなお祖母ちゃんの腕の中に飛び込んだ。祖父が言い争っている間、祖母が孫を抱きしめていた。祖母が口論を始めると、祖父が孫を抱いていた。結局、警察が割って入り、全員を警察署に連れていった。6時間後、息子夫婦は姿を現した。

誰にも気がつかれないことが大事

このとき、小山はこの仕事が成功の内に完了したことを知った。警察は依頼者夫婦に彼らの孫の親権があることを聞き入れただけでなく、小山は誰にも気づかれることなくこの目標を達成したのだ。路上での口論の間中、小山は事態の展開を安全な距離を取って見守っていたのだった。

幽霊のようにやって来て立ち去る小山の尾行に気づくことはまずできない。小山には、「見つかってはいけない」理由がある。彼はきちんと届出をしている私立探偵ではあるが、警察に尾行や監視の現場を押さえられた場合には処分を科されることになるからだ。

日本では、調査は犯罪ではない。だが、捕まったらそれは犯罪になりうる。「すでにこちらに気づいている相手の尾行や監視を続けた場合、それは違法ということになります」と小山氏は話す。『名探偵コナン』や「探偵物語」など、日本には探偵を題材としたアニメや映画、テレビ作品が少なくないが、現実の探偵業はこうした作品とは比べものにならないほど、地味なだけでなく、つねに逮捕される危険性にさらされている。

調査対象が小山の「気配」に気がついた場合、彼は調査を7日から10日間いったん保留する。調査対象者に警察を呼ばれて捕まってしまった場合、状況のいかんにかかわらず、小山は軽犯罪法や各自治体の迷惑行為防止条例違反の罪に問われることになってしまう可能性があるからだ。

調査対象となる人の中には、尾行や監視の恐怖を誇張する者もいる。警察は確認することなくそうした調査対象者の言葉を信じてしまうと小山は説明する。「調査対象の人物が警察を呼んだ場合、警察は私たちの探偵登録を取り消したり、最長6カ月の営業停止を命じたりできるのです」。

次ページ2007年までは誰でも探偵業を始められた
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事