「東大卒」で活躍できる人とできない人の違い 「人工知能革命」の荒波を越える力とは何か

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例えば、営業の仕事に配属になったとき、すぐに直面するのが、「お客様の気持ちが分からない」という悩ましい問題だ。その言葉や表情から真意を読み取ろうとしても、なかなか、それができない。『相手の心を見抜く技術』などという心理学の本をいくら読んでも、現実の人間の心は、それほど単純ではない。そのため、目の前のお客様の気持ちが分からないという現実に直面する。それも、「答えの無い問い」だ。

自分のキャリアプランを考えても、どのような仕事が、本当に自分に向いているのかは、なかなか分からない。これも、「答えの無い問い」だ。

私自身、大学院時代は、研究者の道を歩みたいと思い、それが自分に向いていると思っていたが、希望に反して実社会に出ることになった。しかし、実社会で営業、企画、マネジメントの道を歩み、そうした道が自分に向いている道であることを知った。いま振り返れば、私自身、自分のことが分かっていなかった。

このように、実社会に出て直面する問題のほとんどは、「答えの無い問い」だ。だから、「答えの無い問い」を問う力を、身につけなければならない。

では、そのためには、何が大切か。

安易に「正解」を求めないことだ。

安易に「正解」を求めない

実社会で我々が向き合う問題は、中学校時代、高校時代の教科書や参考書のように、最後のページを見れば「正解」が書いてあるというものはない。

どのような問題でも、まず、自分の頭で考え、考え抜き、自分なりに「正しい」と思える答えを出す。十分な情報収集を行い、色々な人の意見を聴き、様々な分析や検討を行う努力は、するべきだろう。しかし、実社会における問題は、重要な問題ほど、そうした努力を尽くしても、なお、「正解」が見えないという状況になる。

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だから、最後は、自分の「直観判断力」に従って決めるということができなければならない。ときに、自分の中の「賢明なもう一人の自分」の声に従って決めることができなければならない。

そうした経験を積み重ねながら、「答えの無い問い」に向き合い、「自分なりの答え」を出していくという力を身につけていかなければならない。

実は、「知的創造力」とは、そうした努力の中でこそ身につくものだ。逆に言えば、安易に、上司の判断を仰ぎ、他人の意見に依存し、何かのマニュアルを探すという人間、自分の頭で考え、自分の責任で決めていくということをしない人間は、決して「知的創造力」を身につけることはできない。

田坂 広志 田坂塾・塾長、多摩大学名誉教授

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たさか ひろし / Hiroshi Tasaka 

1951年生まれ。1974年東京大学卒業。1981年同大学院修了。工学博士(原子力工学)。1987年米国シンクタンク・バテル記念研究所客員研究員。1990年日本総合研究所の設立に参画。取締役等を歴任。2000年多摩大学大学院の教授に就任。同年シンクタンク・ソフィアバンク設立。代表に就任。2005年米国ジャパン・ソサエティより日米イノベーターに選ばれる。2008年世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Agenda Councilのメンバーに就任。2010年世界賢人会議ブダペスト・クラブの日本代表に就任。2011年東日本大震災に伴い内閣官房参与に就任。2013年全国から経営者やリーダーが集まり「21世紀の変革リーダー」への成長を目指す「田坂塾」を開塾。

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