「東大卒」で活躍できる人とできない人の違い 「人工知能革命」の荒波を越える力とは何か
私が働いたシンクタンクは、ゼロックスの開発を始めとする様々な先端技術の開発で知られる技術系シンクタンクであり、当時、米国のオハイオ州コロンバス、ワシントン州リッチランド、スイスのジュネーブ、ドイツのフランクフルトの四研究所で、総勢八千名の研究員とスタッフが働いていたバテル記念研究所であったが、この中でも最大の組織を誇るリッチランドのパシフィックノースウェスト研究所に着任したときのことだ。
私は、その研究所で高い評価を受けるのは、「創造的な研究」をした研究員であろうと思い、「クリエイティビティ(creativity)」ということが評価基準であると思っていたが、着任のとき、所長から言われた言葉に衝撃を受けた。
「この研究所では、『創造性』(creativity)という言葉は使わない。『革新性』(innovativity)という言葉を使う」
そして、実際に、その研究所で働いてみると、所長の言葉通り、どれほど「創造的なアイデア」を提案しても、それだけでは評価されない。そのアイデアを具体的に実行し、何かの「イノベーション」(革新)を実現したとき、初めて、その研究所で評価された。そして、これは、決して、バテル記念研究所だけの文化ではない。
いま、世界で最も創造的な人材が集まる企業と言われる「グーグル」においても、やはり、社内での評価の基準は、新たなアイデアを提案することではない。そのアイデアを具体的なソフトウェアとして試作したとき、初めて高い評価を受ける。
世界の最先端で活躍する「創造的な人材」とは、「アップル」の創業者、故スティーブ・ジョブズを始め、実は、そうした「アイデア実現力」を身につけた人材なのだが、現在の我が国の大学教育においては、残念ながら、そうした教育は、あまり行われていない。
アイデア実現力とは「現実変革力」
では、その「アイデア実現力」とは、どのような力か。
それは、言葉を換えれば、実社会において、アイデアの実現を妨げる目の前の現実(上司の判断、仲間の意識、職場の文化、会社の方針、技術的な問題、資金的な制約、制度的な壁、市場の現状、社会の仕組みなど)を変えていくことのできる力、「現実変革力」と呼ぶべきものだ。
もとより、実社会に出たばかりで、すぐに、この「現実変革力」を発揮することはできない。いつか、社会に革新をもたらし、世の中に貢献する事業のアイデアを実現したいと思うならば、10年の歳月をかけてでも、この力を身につけていかなければならない。
では、どうすれば、目の前の現実を変える力、「現実変革力」を身につけていくことができるのか。
そのためには、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という「七つのレベルの知性」を身につけていかなければならない。
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