「AI×人口減少」の未来を乗り越える処方箋 保育園を変えれば状況は大きく変わる?

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新井:一方で欧米では、他国から人が入ってくることを前提に教育課程が作られています。だから、国語(母語)の教科書がものすごく論理的です。読めない・書けないことを前提に「こうやって、こうやって、こうやれば読めるようになる」という科学的な方法論ができ上がっているんです。

加谷:確かに日本の文化圏では、論理と感情とルール・掟が渾然一体となっていて、事実を切り分けて「こうなので、こうしましょう」と論理だけで表現することがほとんどありませんよね。そうやって事実だけを正確に伝える訓練を、子供のうちに受ける機会がないということでしょうか。

これまではそれでよかったのかもしれませんが、今は生まれてしばらく海外で育つ子供や、親の母語が日本語ではない子供も増えています。「日本語ができない子もいる」という前提で教え方を見直す時期に差しかかっているのかもしれないですね。

新井:かつて、子供は大勢の大人に囲まれて育っていました。今では「ワンオペ育児」なんて言われるように、20~30年前とは全然違う状況で子育てが行われています。大人との関わりが少ないと語彙は増えませんし、ひとりの大人のしゃべり方しか聞いていないと聞き取る力が育ちません。

ですから今後は、子供にどれくらい語彙があるか、どれくらい説明できるか、といった能力を測る必要があるかもしれません。その上でアメリカなどのように、言語を扱うレベルに応じてクラス分けをした上で、子供の言語獲得のニーズに合わせて言語教育することが必要になってくる気がしますね。

現代の子供に足りないのは「渇望感」

加谷:教育の問題はあるにしても、どうして認識力に差があるのかという部分に興味があるんですが、読めない人は文字を図形としてしか見られないんですか?

新井:と言うよりも、文章からイメージを思い浮かべられないんだと思います。文字と図の相互リンクができない。文章だけなら、何とか穴埋めして理解しようとするんですが、それをイメージと結びつけられないというのは、まさにAI的な理解の仕方です。

あるいは、概念と現実世界が結びつかないというのもあります。例えば「マルコフ過程」(*編注:未来の事象が起こる確率は、過去とは関係なく、現在の状態によってのみ決定される)について教わったときに、「それって日常生活で言うところの天気予報だよね」とすぐに還元できないんです。

よく「基礎と応用の谷」とか「応用と実用の谷」などと言われますけど、ひとつのことはできるのに、それを別のことに応用できないわけです。マルコフ過程を覚えただけで終わってしまって、「これって予測変換にも使えるな」「じゃあ、あれにも使える」......という発想が浮かびません。

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