知っておきたい「エルサレム問題」の基礎知識 米大使館の移転で緊迫化したのは当然だ

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●なぜトランプ氏はエルサレムを首都認定し、大使館移転を発表したのか。

米政界では長年、イスラエル寄りの政治家から米大使館をテルアビブからエルサレムに移すよう求める圧力があり、トランプ氏は2016年の大統領選で大使館移転を公約に掲げていた。

ペンス副大統領とトランプ氏が指名したデービッド・フリードマン駐イスラエル大使が、エルサレムの首都認定と米大使館移転を強く後押ししたと考えられている。

この決定は、トランプ、ペンス両氏に投票した多くの保守層と福音主義キリスト教徒たちに支持された。

トランプ氏の行動は、エルサレムへの大使館移転を定めた1995年の「エルサレム大使館法」に基づいている。クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマら歴代大統領は一貫してその実行を権利放棄してきた。

トランプ大統領は昨年12月6日に大使館移転を発表し、同法を引き合いに出し、歴代前任者たちを「意気地なし」と非難。「彼らは実行しなかった。だが今日、私は実行している」と語った。

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地

●エルサレムはなぜ中東紛争でこれほど重要な役割を担っているのか。

それは、宗教、政治、そして歴史的な理由からだ。

エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地であり、エルサレムにはそれぞれの宗教が重要視する場所がある。

数千年もの間、住民たちや地域の大国、そしてエジプト人やバビロニア人、ローマ人、イスラム教支配者、十字軍、オスマン帝国、大英帝国といった侵略者たち、また現代ではイスラエルやアラブ諸国が、エルサレムを巡ってさまざまな争いを繰り広げてきた。

イスラエル政府は、エルサレムを永遠かつ不可分の首都と見なしているが、国際的にはその主張は認められていない。パレスチナ人は、東エルサレムが将来のパレスチナ国家の首都でなくてはならないと主張している。ユダヤ人はエルサレムまたはイェルシャライムと呼び、アラブ人はクドス(「聖地」の意)と呼ぶ。

エルサレム旧市街中心部にある丘は、ユダヤ教では「神殿の丘」、イスラム教では「ハラム・アッシャリーフ(高貴なる聖域)」として知られる。古代ユダヤ寺院の遺跡があるが、現存するのはヘロデ大王によって築かれた神殿を囲む外壁だけである。西側の「嘆きの壁」はユダヤ教徒が祈りをささげる聖地となっている。

壁からほど近い場所には「岩のドーム」と「アルアクサ・モスク」というイスラム教の聖地がある。同モスクは8世紀に建設された。イスラム教徒にとっては、メッカとメディナに次ぐ第3の聖地だ。エルサレムはキリスト教徒にとっても巡礼の地であり、イエス・キリストが教えを受け、処刑され、復活した場所としてあがめられている。

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