「夏は受験の天王山」がフランスで論外な理由 運動会も入学式もないが、受験戦争もない
数人の日本人の母親に尋ねると、「子どもの受験のために夏休みの旅行に出掛けないのは、普通」とか「仕方がない」という意見ばかりだった。
「旅行に出掛けてもいいけれど、留守中に何かあったら嫌でしょう」とある母親は言う。「受験前の大切な夏休みは、子どもにはベストの状態で勉強させてあげたい」。
また、別の母親は「大学入試は一般入試以外にAO入試や推薦入試もあって複雑。親がかかわらざるをえない」とため息交じりに話した。確かに、夏休みに開かれる各大学のオープンキャンパスには、親子連れの姿が多く見られた。なかには両親そろって来ている家庭もあった。
子どもの受験に親が密接にかかわる、日本の受験事情はフランス人には理解しがたいようだ。
追い込みが効かないフランスの大学受験
フランスでは、マクロン政権が大学教育の改革を進めているが、これまでは大学入学資格(バカロレア)があれば、原則として誰でも大学に入学することができた。エリート養成を目的とするグランゼコールに進むため、高校卒業後にプレパ(グランゼコール準備学級)に入学する場合は選考があるが、高校の成績などに基づいて行われる。日本のように、受験が近づいてきたら追い込みをかけるというわけにはいかないのだ。
学校以外に塾に行く、という日本の慣習にもフランス人は首を傾げる。
駅前に塾の看板が林立……というような光景はフランスにはない。塾は基本的に学習に困難を抱える子どもをサポートするためのもので、さほど多くはないのだ。成績向上のために子どもに家庭教師をつける家庭もあるが、あまり一般的ではない。
フランス人の知人女性の話では、「フランスの学校の勉強はバカロレアの試験に役立つような内容になっているから、塾は必要ないのです。学校で楽しんだりしないし。学校では勉強に集中する」という。
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