87歳バフェットに学ぶ億万長者への9つの視点 なぜアップルを評価し仮想通貨はダメなのか

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質問は3つの形式で行われる。1つは、フォーチュン、CNBC、ニューヨーク・タイムズの記者やコメンテーターに送られてきた一般からの質問を選んだもの。次にアナリスト3人からの質問。そして会場の株主からの質問だ。すべてその場でバフェットとマンガーがぶっつけ本番で受け、全部で60前後の質問に答える。2人は、すべての質問に答えようと努力し、そして見事にポイントを得ていて、ずれることがない。ここまで引っ張ったが、それでは「開会宣言」とともに今年の主なQ&Aを9つ紹介しよう。

傘下企業の商品やグッズなどが安く買えるのも株主総会のお楽しみ。人々はショッピングにも余念がない(筆者撮影)

バフェット開会の発言:(ニューヨーク・タイムズの一面に太平洋戦争で米国軍が敗走する写真を見せながら)1942年当時にS&P500指数のインデックスファンドに1万ドル投資していたら今では5100万ドルになっている。金に投資していたら、はるかに少ない40万ドルにしかなっていない。株価欄をよく見たり、FRB(米連邦準備制度理事会)の一挙手一投足を追ったりする必要はない。これらの判断は生涯の投資という意味では何の役にも立たない。相場を読み、FRBが1年に3回あるいは4回利上げするかを追って売買して利益が上がるようなことはない。簡単だが一貫した方針で持ち続ける(Stay the course)ことが大事だ。こうすれば証券会社は干上がる。大事なことは、生産性に着目することだ。株のような(付加価値を生む)生産性ある資産に投資し、金のような生産性のない資産に投資しなければ、100倍以上の違いになる。

ハサウェイは存在感が薄れる?

質問1:近年たくさんの資本投下が必要な企業の買収が多いが、たとえば17%を保有するアメリカン・エキスプレスや買収したシーズ・キャンディのような資本投下の必要が少ない企業になぜ投資しないのか。(8歳の少女からの質問)

回答:(バフェット)いい質問だ。バークシャーは近年大変大きな規模になり、買収向けの資金が巨額になったので、投資成果を上げるために大きな企業を買収する必要があり、そういう企業を買収する場合、どうしても資本を必要とする大きな企業になりがちだ。

(マンガー)資本を必要とする企業は、ほどほど満足できる利益を上げられる。

質問2:バフェットとマンガーが亡き後、バークシャーに頼ってくる(買収されることを要請してくる)企業はなくなるのではないか?

回答:(バフェット)バークシャーの評判は、いまやバークシャーに帰属する。創業者企業にとっては、買収された後、事業がどう営まれ、どう帰着するかを大変気に掛けるものだ。買収の際最初に声がかかるのは、疑いなくバークシャーだ。それは私やマンガーがいなくなってほかの誰かがやることになっても、変わらないだろう。

質問3:なぜマイクロソフトに投資しなかったのか?

回答:(バフェット)マイクロソフトを早い時期に買わなかったのは、おのれの“愚かさ”からだ(この答えには解説が必要だ。バフェットとゲイツは1990年代初めに知り合っている)。その後ゲイツがバークシャーの社外取締役になってからは、内部情報を受け取っていると疑いをもたれないよう、買いを控えている。

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