アイス市場が低成長の日本で伸び続ける理由 「大人」や「冬」も取り込む戦略が奏功

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アイス市場が好調な理由は、大きく2つある。1つは購入世代が変わったことだ。

「昔のアイスは『子どものおやつ』で、子どもが店に買いに行き、お母さんがスーパーでまとめ買いする商品だったが、近年はメーカー各社が販売戦略に力を入れた結果、『大人向けスイーツ』となったのです」(アイスクリームプレス社社長・二村英彰氏)

かつて、全国各地の小学校近くには、駄菓子屋(小さな食料品店)があり、アイスを売っていた。子どもが買いに行く姿もよく見かけた。それが、たとえば東京都杉並区の小学校近くでは、複数の店がこの10年で閉店した。代わって存在感を増すのは、全国に5万5000店以上(日本フランチャイズチェーン協会加盟店の集計。同協会調べ)の店を持つコンビニで、“コンビニアイス”の言葉もある。だが購入者は圧倒的に大人だ。

駄菓子屋でアイスを買っていた子どもが、大人になってスーパーやコンビニでアイスを購入しているのだ。最近も「ウチの20代息子は、毎晩の風呂上がりに、ビールではなく、自分で買ってきたアイスを楽しむ」(40代の男性会社員)という声を聞いた。

一方、「アイス→お酒→アイス」に戻る年配者も増えた。二村氏が続ける。

「アイスがある環境で育った団塊世代は、現役時代は仕事関連の飲酒も多く、アイスから離れる人も多かった。それが定年退職後は飲み会も減り、『スーパーやコンビニで、久しぶりにアイスを買ったらおいしかった』とリピーターになるケースも目立ちます」

数字の伸びに貢献する「冬アイス」

もう1つ、年間で市場が伸びる要因は「冬アイス」人気だ。業界でも訴求しており、近年は最需要期の夏に天候不順で売り上げが伸びなくても、暖房の環境が整った冬場の売り上げ増で落ち込みをカバーする展開にもなった。

夏と冬ではアイスに対する消費者意識も異なる。夏にアイスを食べる理由で多いのは「暑さしのぎ」だが、冬は「息抜き」や「癒し」といった理由が多くなる。

冬アイスは、メーカー各社も力を入れる。夏は生産ラインもフル稼働になるが、冬はラインにも余裕ができる。欠品(品切れ)を起こさないため、安定した大量生産を最重要視する夏場とは違い、冬場は、新たな商品の取り組みもしやすい環境にある。

そうした背景も手伝い、各社が力を入れるのが高価格帯の“プレミアムアイス”と呼ばれる200円前後の商品。特にコンビニでは売れ筋で、量も少なめでよいのも特徴だ。「夏場の売り上げが圧倒的な氷菓系とは違い、プレミアムアイスは春夏と秋冬の売上差がほとんどない」(大手流通)とも聞く。

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