アイス市場が低成長の日本で伸び続ける理由

「大人」や「冬」も取り込む戦略が奏功

一般家庭が「どんな品に消費しているか」を探る定期調査がある。総務省の「家計調査」というものだ。

それによれば、「1世帯当たりのアイスクリーム・シャーベット」の支出金額は、過去10年で15%増えており、特に冬場の増加率が高いという。ここでも「冬アイス」の伸びが指摘されたが、興味深いのは「都道府県庁所在地、政令指定都市別のランキング」だ。

2011年から2017年までの7年間で、金沢市(石川県)が首位になること5回、残り2回は富山市(富山県)だったのだ。「北陸勢強し」である。

なぜ、金沢市民はアイスにカネを使うのか? 同市の「情報政策課」に理由を聞いたところ、「関連部署にも確認したが、これという調査結果はありません」だった。そこで金沢市民である満留仁恵氏(「カフェドマル」店主)に協力してもらい、顧客の話も調べてもらった。

「家庭用のカップアイスやバーアイスは、お皿などの準備がいらないし、価格も安い。そうした手軽さも大きいと思います。こちらのスーパーでは、よく割引もしており、なかには半額セールのときもあります。『味が劣化しない』『日持ちするから買い置きしやすい』という声もありました」(満留氏)

アイスの半額セールは、首都圏のスーパーではあまり見かけない。そうした現象の裏には本質が隠されている。

「スイーツでもてなす」が金沢流

満留氏からは「金沢市は、同じ総務省調査の『他の和生菓子』でも長年にわたり首位です。市民がアイスクリームや和生菓子などの“甘いもの”を頻繁に購入するのは、加賀百万石の『茶の湯文化』の影響もあるように思います。お茶を楽しみ、甘いものを楽しむ。お客さまに対しても、スイーツでもてなす文化なのです」という意見も寄せられた。

前述の二村氏も同意見で、この指摘は興味深い。実は、同じ家計調査「1世帯当たりの喫茶店代」の支出金額で、毎回首位を争うのが、名古屋市(愛知県)と岐阜市(岐阜県)だ。3位は東京23区(東京都)が定番だが、この両市とは金額で大きな差がついている。

名古屋市も岐阜市も、自分たちでカフェ・喫茶店を使う一方、お客さんが来ると、「コーヒーでも飲みに行こうか」と連れ出す。この“カフェ連れ出し文化”は他地域ではあまり見掛けない。そのもてなし文化が、喫茶店ではなくスイーツに反映されるのが、「アイス日本一」の金沢市なのだ。

家庭用アイスは100円前後で買え、息抜きにもなれば、特にバーアイスは“ながら食べ”がしやすい。メーカー各社を取材すると、最近は「スマホをいじりながら食べる行為も多い」と聞く。金額も行為も手軽に楽しめる点も人気なのだ。

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