日本人を不幸にする「会社員至上」の生き方 橘玲×湯山玲子「人間いつかはフリーになる」

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湯山:欧米などのキリスト教文化圏では、とにかく自分の悩みや問題を言語化して、カウンセリングなどに行ってラクにしてもらうシステムが生活の中にあるけど、日本はそれがない。占い師のところに行く、となっちゃう。男性は「飲んで発散」だったけど、若い世代はそれもなくて、アイドルやらで現実逃避してしのぐ。

:人生100年時代の最強の人生設計は“生涯共働き”以外にありません。老後問題って要は老後が長すぎるという問題だから、働いて老後を短くすれば解決します。でもそういう話をすると、50代の男性の反応は「懲役10年だと思ってたのに、無期懲役ですか」(笑)。

自分が「会社という牢獄」に入ってるという感覚なんです。そういう男性の家庭には必ず専業主婦がいて、奥さんに働いてもらえばいいだけなのにそういう発想はない。みんながやってるとおりにすれば何とかなると漠然と思っていて、それじゃうまくいかないという現実を突きつけられて慌ててるんですね。

湯山 玲子(ゆやま れいこ)/著述家、プロデューサー。日本大学芸術学部文芸学科非常勤講師。自らが寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック(通称・爆クラ)」を主宰するなど多彩に活動。現場主義をモットーに、クラブカルチャー、映画、音楽、食、ファッションなど、カルチャー界全般を牽引する。著書に『クラブカルチャー』(毎日新聞社)、『四十路越え!』(角川文庫)、『女装する女』(新潮新書)、『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)、『快楽上等!』(上野千鶴子さんとの共著。幻冬舎)、『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』(KADOKAWA)などがある(撮影:七咲友梨)

湯山:自分という資源に無自覚ですよね。「どうせ、私なんか」という言葉がすぐに頭をもたげてくる。主婦が持ってる潜在能力を意識的に使えば結構おカネになると私は思うんですよ。英文科卒の主婦がネットで翻訳業をスタートさせてみるとかさ。

:価値観自体は変わっても、ライフスタイルを変えられなくてみんな苦しんでる。出版社にいた頃、何度も裁判で訴えられたんですけど、「会社っていうのは個人が楽しく生きるための道具なんだから、会社が潰れたってべつにいいんだよ」って言ったら、腰が抜けるほどびっくりされた(笑)。国だって、国民が幸福に生きていくための道具ですよ。

湯山:そこですよ。私も私と同世代の文化系たちも、そういった意識はけっこう「当たり前」だったのに、今はそうではない。「政治的なことは個人的なことだ」というのは、1960年代以降のアメリカにおける学生運動およびフェミニズム運動におけるスローガンですが、私と橘さんには、これまでいろんな社会経験を経て培った、個人的な自立と自由のスタンスが共通にあるのではと思っています。

自分の人生の主人公は、結局自分である

:ただ、今思うと80年代ってある種社会に余裕があったから冒険できたし、それが許されたんですよね。全体的に市場が縮小するとやっぱり冒険できなくなってくる。失敗するから学ぶのであって、失敗できないのはかわいそうです。失敗しないまま30代になったら、もうリスクはとれないですよね。それが、怖いというのにつながっているのでは。

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