300万円あったら小さな会社を買ってみよう

サラリーマンにも資本家への道はある

もちろん、読者にとって本書の魅力はこのような「社会的な意義」にはない。雇われ社長よりも資本家を目指したほうが大きな見返りが得られ、サラリーマンは「起業」よりも「企業買収」のほうが近道であると説いている。実益を目指した、生き方の提案なのだ。買収先企業の業績を伸ばすには、サラリーマンの経験が非常に役に立つというのである。

人生100年時代や人口減少社会についてのビジネス書がベストセラーになっている。ただ40代・50代のサラリーマンは、それを読んでも打つ手を思いつかず心配が募っているのではないだろうか。本書は、さながら蜘蛛の糸である。さらに、20代・30代も多数購入しているという。若い人の行動は早い。しかし、芥川龍之介の小説のように、慌てて後に続くものを追い払ってはいけない。

本書によると、制度も追いつきつつあるという。いずれ新しい働き方・新しい世の中ができ、より太い糸になることを期待しよう。その前に自らすべきことは、正しい企業買収の判断力をつけることである。世の中の先を見る目と、買収先企業のデューデリジェンス、そして自分の力を知ることだ。そして何より、本書を読んでコンセプトを理解することが先決だ。

以前私は、起業家ゼミに参加したことがある。そこには、飲食店を経営したいという夢をもつ方が大勢いた。しかし本書では、飲食店経営のノウハウがないサラリーマンに成功はおぼつかないと説いている。著者は、実例を示すなど言葉をつくして、飲食店起業という地獄の選択肢から読者を遠ざけようとしている。ここも、本書の読みどころの一つだ。

夢を抱く人は「良いものを安く提供したい」と意気ごむ。そうすると、FL比率が高くなりがちなのだ。FL比率が55%以上になると採算がとれない。儲からないお店は続かない。FL比率とは何か。それについても、本書できちんと説明されている。すでに飲食店開業の夢に向かって邁進されている方も読んでおいて損はない本だ。

「夢」は居心地の良い暮らしとセットのはず

もう一つ、皆さまに是非ともお伝えしたいことがある。そもそも、夢というのは居心地の良い暮らしとセットのはずだ。年をとってから、慣れない仕事を延々と続けるのはツラい。少しくらい蕎麦が好きだからといって、掃除や仕入、経理や従業員教育といった飲食店経営の役務を毎日担うことはできるだろうか。それよりもまずは、会社勤めで手にした武器を見つめ直してみたらどうだろう。

本書によると、事業承継に苦しむ中小企業のなかには、当たり前の経営管理がなされてない会社もあるという。大企業にお勤めの方なら、PCのスキルもあるし、OJTなどで様々な管理手法も身につけているはずだ。ドラスティックな手法をとらなくても、これまで普通に実践してきた仕事をすれば業績を回復できる可能性があると説く。

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