300万円あったら小さな会社を買ってみよう サラリーマンにも資本家への道はある

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サラリーマンはすでにある事業(イチ)を大きくするために日々精励している。しかし、起業をするということは、ゼロからイチを生み出すことであり、求められるものが根本的に異なる。本書の記述で私が大きくヒザを打ったのは、フジテレビ買収に関する堀江貴文氏と堀紘一氏との次のやりとりである。堀氏の発言から始まる。

『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門』(講談社+α新書)書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

“「君みたいな若いやつが、フジテレビの経営なんてできるか」といったことを吐き捨てるように言いました。(中略)それに対して堀江さんは、なんと「できますよ。何を言ってるんですか。僕はもう10年、社長をやってるんですよ」と言い返したのです。 ~本書より”

これについて著者は、堀江氏がゼロからイチを作った起業家として乗り越えてきた苦難は想像を絶するものがあっただろう述べ、経営者としてそれほどの経験値を持つ人は当時のフジテレビには一人もいなかっただろうと推測している。そして、堀江氏が率いるフジテレビを見てみたかったと書いている。

確かにフジテレビは、現在、視聴率が低迷している。もともと、一般的な改善はすでに実施されていたはずで、求められていたのは雇われ社長の手腕ではなかったということなのかもしれない。そして私は再度、書名を見返した。『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』。よくできたタイトルである。

「大廃業時代」を前に、今は好機​だ

著者が薦めているのは、小さな会社を一般的な業務管理手法で改善し、企業価値を上げることである。買収先さえ間違えなければ、資本家となり、これまでの人生とは違う次元の見返りを得ることも夢ではないという。しかも「大廃業時代」を前に、今は優良な買収先候補が手つかずで残されている好機なのだ。

著者の提案には、説得力がある。「終身雇用は現代の奴隷制度」堀江貴文氏も、本書を推薦している。定年退職して年金暮らし、脱サラして起業。そのいずれでもない第3の選択肢を提示した大変興味深い本である。日本のサラリーマンの生き方をリフレームする、この本の意義は果てしなく大きい。

吉村 博光 HONZ

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よしむら ひろみつ

夢はダービー馬の馬主。海外事業部勤務後、13年間オンライン書店e-honの業務を担当。現在は本屋さんに仕掛け販売の提案をする「ほんをうえるプロジェクト」に従事。

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