凡人が天才に勝る方法は「努力の継続」だけだ 「ハイキュー!!」「弱虫ペダル」の脇役から学ぶ

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現実社会でも、まるでマンガや小説、映画の主人公になりそうなキラキラ光る人材は無数にいます。そういう人をみると、圧倒され、まるで自分に居場所がないように感じられる。そんなときマンガのなかの誰に心を寄せればいいのか。それが、「普通」から一歩一歩進み続けるキャラクターです。

「平凡」に悩む田中先輩

たとえば高校のバレーボール部を舞台にした『ハイキュー!!』の田中龍之介先輩。

『ハイキュー!! 30』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

田中先輩は主人公の日向翔陽らの所属する烏野高校の2年生で、日向らからは「田中センパイ」と慕われます。物語の最初では、部活に入ったことがない日向や中学時代うまく部活になじめなかった影山飛雄に、「いいセンパイ」としての顔を見せ、2人を部活に巻き込んでいきます。

しかし物語が進むにつれ、試合の活躍においては日向や影山に追い抜かれていく。

さらに同学年には、西谷夕というリベロの「天才」がおり、幼なじみの女子バレー選手も、背の高さというポテンシャルを持つ。実際田中先輩はインターハイの舞台で、強豪高校との試合中、「自分は平凡なんだ」という考えが頭をよぎります(もちろん、田中先輩は烏野高校のコーチから、メンタルの強さなどで次期エースとして認められている選手です。私を含む読者から見るとすばらしい選手です)。

フツーの人ならここで心が折れるところ。そしてネガティブスパイラルに突入します。

しかしここが田中先輩の違いであり強さなのでしょう。「ところで平凡な俺よ 下を向いている暇はあるのか」――こう心で思いながら、セッターに対して自分に向けてボールを回してほしいと呼び込みます。

この思いからは「普通の存在だからこそ、前を見て進み続けなければならない」という強い決意が感じられます。

実際、ずば抜けた能力や才能を大人になってから獲得するのは難しい。でも「前を向こう」という決意は、いつでもできること。周りと自分を比べて落ち込んでしまう読者が『ハイキュー!!』でまず見習うべきは、強力なサーブが打てる及川徹でも、セッターの天与の才を持つ影山飛雄でも、大きな体を持つアタッカー東峰旭でもなく、常に前を向く田中先輩の姿勢ではないでしょうか。

そして田中先輩のような普通の人が登場することは、異次元スターを生み出してきた少年マンガが、改めて普通の人のすごさや踏ん張りを描き出したのだとも言えます。「普通の人だって日常生活を平和に過ごしているだけではない。活躍の舞台に上がれるのだ」と。

次ページ一方、ロードレース漫画『弱虫ペダル』では…
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