北朝鮮が韓国に「電力支援」を切望する事情 発電所の低稼働や送電網の改善が必須

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北朝鮮にある発電所も、きちんとその役割を果たせていない状態だ。北朝鮮は電力難解決のため、水力や火力発電所を建設してきた。大型発電所は68カ所、中小型発電所を含めれば約1180の発電所がある。しかし、利用率が水力・火力を合わせても30%にすぎない。

韓国が70~80%の発電設備利用率を維持していることに比べると、はるかに劣っている。また、火力発電所は燃料供給にも支障を来しており、水力発電所はしばしば発生する洪水と日照りできちんと運営されていない。

監査法人のサムジョンKPMGが最近発行した『北朝鮮ビジネス進出戦略』によれば、北朝鮮の火力発電所は30年以上使用された設備が78%を占めている。火力発電容量の65%が大規模な改修・補修、廃棄またはリニューアルの対象となっている。韓国水資源公社によれば、北朝鮮の水力発電設備は老朽化が深刻で、53%が全面取り替えの対象だという。

発電所と送電網の刷新をできるのは韓国だけ

現在、北朝鮮で製造業の稼働率が低調な主な要因も、電力不足であるためだ。しかし、北朝鮮の技術水準や経済条件を考えると、北朝鮮が自ら現況を改善できるのは事実上不可能だ。解決には外国の協力や支援が必要だが、北朝鮮に投資できる国は韓国だけだ。

結局、韓国の技術と資本で北朝鮮の老朽化した発電所をリニューアルすれば、本格的な経済協力を始められる。したがって、今後の南北関係が改善され、経済協力が推進されれば、発電所の問題が優先的課題となる可能性が高い。

今秋予定されている次の南北首脳会談でも、北朝鮮が政治的負担が相対的に少ないエネルギー協力について積極的な支援を要請しそうだ。韓国電気研究院のユン・ジェヨン責任研究員は「北朝鮮の電力産業の現況と独立統合ケース」という報告書において、「統一費用を節約することを考えれば、最も革新的な役割を果たす北朝鮮の電力産業に対する検討が必須」と述べている。

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