韓国が期待する「北朝鮮ビジネス」の皮算用 南北経済協力の推進は経済浮揚につながるか

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4月27日の首脳会談を契機に、経済へ軸足を移した金正恩・党委員長(写真:キム・サンソン記者)

歴史的な南北首脳会談が終わった。次には米朝首脳会談が控えているが、今まさに朝鮮半島には画期的な変化が生じつつある。世界の関心は「北朝鮮の非核化」に集中しているが、「南北の経済協力」も重要なテーマだ。本稿では、経済協力の見通しについて分析していきたい。

1人当たり国民総所得の差は約22倍

南北の経済協力では、とくに開城(ケソン)工業団地の再稼働と金剛(クムガン)山観光の再開への関心が高まりそうだ。さらにその先には、数十兆ウォン(数兆円)台と推算される北朝鮮のインフラ建設という、新たな市場の創出も期待されている。今後、南北の経済交流が韓国経済に相当な影響を与えることになるだろう。

当記事は韓国の経済誌「中央日報エコノミスト」掲載記事の日本語訳です

3198万ウォン(約320万円)と146万ウォン(約14万円)ーー。これが韓国と北朝鮮の1人当たり国民総所得(GNI)だ。その差は約22倍にもおよぶ。発電設備容量は13.8倍。携帯電話加入者は韓国に6130万人もいるが、北朝鮮ではたったの361万人に過ぎない。

韓国人が当たり前に使っている電気と移動通信は、北朝鮮の人々にとっては貴重なものなのである。

東西ドイツが統一される前、東ドイツの国民総所得は西ドイツの3分の1レベルだった。現在の南北朝鮮と比べるとその差ははるかに小さかったが、それでも東ドイツは「差が大きいため、いきなり統一するのは難しい」と想定していた。そのため、経済交流を通じて、まずは西ドイツの経済的実益を追求する道を経た。経済レベルの差が大きい状況のまま統一してしまえば、混乱が生じるためだ。

朝鮮半島も同様だ。南北がドイツと同じやり方(北朝鮮にとって有利な比率)で通貨統合を行えば北朝鮮の貿易商品の競争力が急落し、生産力は減少するおそれがある。これを心配して通貨価値に大きな差を残したまま統一すれば、北朝鮮の国民が韓国に流入し、大きな社会問題が生じうる。どのような方法をとるにしても、双方の経済水準の差が大きいままでは、統一それ自体が大きな負担にならざるをえない。

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