「教育困難大学」に来る学生の残念な志望動機 必然的に起きる「5月病」に苦慮する教員たち
筆者は、こうした大学での初年次教育の授業を2010年頃から担当しているが、毎年、最初の授業で行うことがある。それは、学生たちに「本当の志望動機」を書いてもらうことだ。「本当に、本当のことを書いていいんですか?」といった質問も出るが、いざ書かせてみると、新入生たちは驚くほど正直に自分の志望動機を明らかにしてくれる。
受験勉強をした経験のある学生、推薦入試やAO入試で苦労せずに入った学生など、いろいろな人がいるが、その内容から個々の学生の学習体験や大学での学習意欲を知ることができる。過去には、配布された原稿用紙に、顔文字や「めっちゃ」「やばい」などの言葉を何の疑いもなく書く学生もいた。また、段落分けをしているのに書き出しの1字分が空けられていない、行頭のマス目に「、」「。」などを書いてしまう、といった小学校で習うはずの基本的なミスをしている学生も相当数存在した。
しかし、最近は、これらのミスをする学生は減ってきたように思う。学力向上を目指した小・中・高の各学校の努力の成果なのか、大都市圏にある大規模大学の定員厳格化によって、これまでとは少し質の異なる学生が、筆者の教える大学にも流れ込むようになったせいなのかもしれない。
流れのままに淡々と進学してくる
その一方で、最近は大学に進学する志望動機そのものが変わったと感じるようになった。教え始めた当初は、学生の書く「本当の志望動機」の中に、自分が大学進学できたことへの感慨や、高等教育の場である大学での学びに自分がついていけるのかという不安が読み取れることが多かった。
しかし、最近は、このような思いを綴る学生の数が減少している。そして、大学進学に特別の思いを持たず、流れのままに、ある意味淡々と進学してくる学生が増えてきた。高校卒業生の約半数が大学進学するようになっても、やはり大学は高等教育機関であり、それなりに敬意が学生から払われる場であると考えている方が多いであろう。しかし、今の学生の「本当の志望動機」を読むと、そんな思いは覆される。
その根拠として、今年の新入生が書いた「本当の志望動機」のいくつかを以下に挙げてみたい。なお、文章表現は学生が書いたままであるが、個人を特定できないように配慮していることをお断りしておく。
文面にもあるが、これを書いた学生は通常より遅い時期の指定校推薦で入学している。このような経緯で入学するのだから不真面目な学生だろうと思われるかもしれないが、実は非常に真面目な雰囲気の人物だ。授業中の態度を見ていると、自動車運転免許取得と本来の志望大学を天秤にかけ、自動車学校を選んだという経緯が信じられない程である。本来の志望大学へ進学したいという意欲もさほど強くなかったのだろう。
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