いよいよ「ゴルディロックス相場」は終わりへ 米国の長期金利3%は通過点にすぎない

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そこで注目されるのが、FRBの利上げスケジュールだ。株価の下落が逆資産効果につながれば、景気を冷やす可能性がある。急激な下落はなくとも、トータルで10%を超える調整があり、2月の調整と併せて20%程度の下落となれば、FRBも無視はできない。現在FFレート先物では年内4回の利上げが織り込まれ始めているが、そのペースを遅くする可能性がある。

各国が金融緩和的な状態にある中で、相対的に金利の高いドルには日本をはじめとする海外から投資資金が多く流入しているが、FRBが短期金利を引き上げていけば、海外の投資家のヘッジコストは上昇し、長期国債の買いに慎重になる。FRBからすると利上げによって想定以上に長期金利が上昇していく可能性がある。

「長期金利の上昇は利上げペースが速すぎるという市場からの注意勧告かもしれない」(森田氏)。今年2月の就任以降、発言のたびに株価下落に見舞われているジェローム・パウエル新議長は、市場との対話だけでなく、利上げのかじ取りでも苦境に立たされている。ただし、インフレ率が上昇していけば、FRBは利上げを続けざるをえないだろう。

したがって、今回の長期金利上昇を相場の転換点と見る向きもある。藤戸氏は「リーマンショック以降、長らく続いたゴルディロックス(適温)相場が正常化に向かっている」と語る。

これまで米国では、「景気は拡大しているがインフレ率は上昇せず、金利も上昇しない」という状態が続いてきた。企業の業績拡大が続き、投資家はリスク資産を買い続けた。歴史的にも前例のない各国による金融緩和によって、異常とも言えるマネーの相場が形成されてきた。米国の株価は2009年3月を底に右肩上がりで上昇してきたが、2017年はおそらく実体経済に比べて低すぎる金利を背景に株価が急騰した。

米国のインフレ率は今後上昇していく

しかし、物価のモメンタムには変化が訪れている。3月のCPI(消費者物価指数)は食品とエネルギーを除いたコアCPIで前年同月比2.1%、FRBが指標とするPCEデフレーター(個人消費に関わるインフレ率)も食品とエネルギーを除いたコア指数で1.9%と目標の2%にほぼ到達しつつある。

足元の原油価格上昇や平均時給の上昇を踏まえれば物価は2%を超えて上昇してもおかしくはない。それを反映した長期金利の上昇だとすれば、これまで金融緩和で異常な低さに抑えられてきた金利が、実態を反映するノーマルな状態に戻りつつあると捉えることができる。

米国株式市場でもこうした動きを織り込みつつある。4月23日に決算を発表したアルファベットや4月24日に発表されたキャタピラーなど、好決算でアナリスト予想を上回った銘柄でも、瞬間的な上昇の後、利益確定売りが相次ぎ、株価が下落している。

これは投資家が、現在の業績がピークであるという認識に立っていることの表れと取れる。今後をみれば、原油高による費用の増加、長期金利上昇による資金調達懸念、一時的だった減税効果の剥落とマイナス要因が目につく。これまで反映してこなかったそうした要因をマーケットは意識し始めた。

あまりに長く続いたゴルディロックス相場だが、マーケットはその終わりを示唆している。2月の米国株価暴落はその予兆とすれば、今回の長期金利上昇は本格的な終焉のシグナルかもしれない。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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