アイドルは想像を絶する「サバイバー」だった 虐待、非行、女子少年院の日々を乗り越えて

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しかし、のーぷらん。での活動は、2017年1月から5月までという短期間で終わった。もともと大学受験をするための受験勉強をしたいと思っていたことに加えて、アイドル活動と並行して応募した、「ミスiD 2018」の選考が進んでいたことも関係している。

「ミスiD」は講談社が主催するオーディションで、「まったく新しいタイプの女の子を発掘し育てる」ことをテーマに掲げる。応募したときには少年院の話は伏せていたが、4000人が応募するこのオーディションで最終審査に残ったときに、戦慄さんは腹をくくった。

「私は破天荒な感じなんですけど、もともとのーぷらん。はキラキラした感じでなじめなかったし、ここにいても私はアイドルとしてステップアップできないなと思ったので、大学受験もあるのでやめさせてもらいますと伝えて、脱退しました」

迎えた2017年11月、多数の審査員を目の前にして開催された最終審査で、戦慄さんは幼少時の虐待の体験、非行と少年院の話を、赤裸々に語った。

「なにかつめあとを残そうと思ったら、それくらいしかなかったんですよね(笑)。少年院っていうのは、さすがにひかれるかなと思ったけど、もういいやって。やりたいことがあったから、そのために話しました」

前代未聞の告白に、審査員も衝撃を受けたのではないか。それは、戦慄さんに「サバイバル賞」を授与したことからもうかがえる。

今、振り返れば「サバイバル賞」は、戦慄さんの人生を表すような表彰だった。「ミスiD」の最終審査の後、受験勉強に専念した戦慄さんは、見事に誰もがその名を知る有名私立大学に合格。ネグレクト、非行、少年院での1年8カ月を乗り越えて、自力で大学にまではい上がったのだ。ひどい虐待などを受けながら生き残った人を、「サバイバー」と言い表すが、戦慄さんはまさにサバイバーだろう。

19歳のアイドルが目指すもの

今春、晴れて大学生になった戦慄さんは、一時休止していたアイドル活動を本格的に再開する。現在は母親、妹と同居中。少年院時代にイヤになったほど過去と向き合ったから、母親を憎む気持ちは薄れたが、わだかまりがとけるはずもない。早くアイドルとしてひとり立ちするために、ピアノ、作曲、ダンスなど9つの習いごとをしているという。

同時に「やりたいこと」を実現するために動き出している。彼女が目指すのは、「今まさに虐待されている子どもたちを救うこと」だ。

「少年院に入ったら、虐待されていた子が結構いたんですよ。でも、虐待を受けている子自身がSOSを出すのって、すごくハードルが高いんです。私自身、虐待されてるときには外に助けを求められなかったし、自分が虐待されてると気付いてないパターンも多いんです。だから、周りの大人が目を向けてあげることが大事だな、と思っていて。たとえば、私の家にはおカネがあるのに、私と妹は貧困状態でした。そういう現状があるということを発信したり、虐待されている子どもたちを助けられるような活動をしたりしていきたいんです。でも、この話だけすると、怪しいでしょ。だから、ミスiDの最終審査で、自分の経験を話しました」

こう考えるようになったきっかけは少年院時代。もともと、カウンセラーに興味を持っていた戦慄さんは、少年院に入って先生に出会うことで立ち直った。だから、1度は法務教官になりたいと思っていたが、アイドル活動をしているうちに、大勢のファンができた。その人たちは、アイドルとして飾らない、「素の自分」を応援してくれている人たちだ。それなら、法務教官ではなく、アイドルとして手にしたファンの力、影響力を使って、虐待を受けている子どもたちを救いたい。そう思ったのだ。

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