「ホームレス路上訪問活動」がやっていること 新宿の「おっちゃん」たちとの出会いと思い出
新宿駅西口の橋の下で顔見知りのおっちゃんたちと立ち話をしていた。すると、初めて見かけるおっちゃんが近寄ってきた。キャップをかぶっている。「あけましておめでとうございます」と声をかけた。「おう」と口数が少ない。元日ということもあって甘酒を配っていたので勧めてみた。
彼は手を振った。いらないらしい。だから、「今日は何してたの?」と他愛もない話を続けた。すると、「ほれ」。リレーのバトンのように輪ゴムで巻かれていた紙をおっちゃんは差し出した。最初は何かと驚いたが、ひろげてみると、壁に貼るサイズの今年のカレンダーだった。
こうして私の2017年は、おっちゃんがくれたカレンダーとともに始まった。その後、キャップのおっちゃんと会うことはなかった。でも、彼のカレンダーは、私の部屋の壁に貼ってある。
屋外専用カイロ熱々、フランスのシャンパンのモエ・エ・シャンドン、デジタルカメラ用三脚、万年筆、ネックウォーマー、真珠のネックレス、ホームレス支援雑誌……。
実はこれら全て、路上のおっちゃんたちからもらったもの。私の部屋の本棚の一番目立つスペースに置いている。「ほれ、いいから持ってけ」と照れながらくれた人、「今日待ってたんだよ、みんなが来るの」と用意して待っていてくれた人。机に向かって勉強していると、ふと目に入るこのコレクション。「おっちゃん、どうしてるかな? 元気かな?」と思う。路上で出会ったおっちゃんたちとの思い出が、この「贈り物」の中にはたくさん詰まっている。
「話す」のを待つ
ここまで書いてきた路上のおっちゃんとは、ホームレス路上訪問ボランティアの「スープの会」で出会った路上生活者のことだ。この団体では親しみを込めて「路上のおっちゃん」と呼ぶ。最初はドキュメンタリーの取材のために始めた支援活動だった。けれど、この活動に私は現在まで、13か月通うことになる。
スープの会は23年間、新宿駅周辺で生活している1人ひとりを「訪問」する活動を続けている。毎週土曜日夜7時に新宿に集まり、駅周辺を4つのコースにわけて周る。お味噌汁の入ったポットを持って、5人ずつぐらいで訪問する。誰でも自由参加で、小学生から大人、外国人、本当にいろんな人がボランティアに来る。
多種多様な人が来ると、おっちゃんたちの話すきっかけにつながるのだ。スープの会に特に決まった時間制限はなく、話を聞きたかったら時間を気にせず自由に会話することができる。「こんばんは、スープの会です。お味噌汁いる?」。大体こんな感じで、会話が始まる。
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