税込み・税抜き、誰のための価格表示? 消費増税後の価格対応は様々。売り手の「論理」は理解されるのか
また、百貨店は宝飾時計など高額品から衣料、住居関連用品、食品まで扱う分野が幅広い。各百貨店ごとに品揃えの差異も少ないため、スーパーマーケットと比較しても、取引先との力関係は強いとはいえない。
実際、「食品やアパレルなど、それぞれの業界から様々な要望が来ている。それらを十分考慮すると、(店内が)いろいろな表示になることを心配している。分かりやすさを訴求するには、総額が分かる工夫が必要になる」(J.フロントの山本社長)と話す。
スーパーを悩ます表示変更のシステム負担
一方、スーパーマーケットは、GMS(総合スーパー)のイオンやイトーヨーカ堂が表明済みのように、本体価格プラス税額を基本にした総額表示との併記が主流になりそうだ。
中堅スーパーでは「総額表示か本体価格表示か、どちらかに一方にする必要があるが、お客様の混乱が一番少ない方法を選択する」(カスミ・藤田元宏社長)、「11~12月には決めることになるだろうが、現段階では未定」(アークス・古川公一取締役)と、逡巡する向きもあるが、主流はGMS同様、本体価格を基本にした併記になりそうだ。
一部スーパーが表示を決めかねる理由の一つには、システム変更の負担がある。フジ・尾崎英雄社長は「システム変更には大きな投資が伴う。一定のボリュームがあれば吸収できるが、中小スーパーにはきつい。増税後に消費が落ち込む可能性もあり、業界に淘汰再編の流れが来るかもしれない」と予測する。
また、スーパーが本体価格プラス税額を基本にするにしても、百貨店と同じ課題がある。
スーパー各社は自社でショッピングセンターやモールを運営し、ほかのテナントとともに中核テナントとして自社店舗を出店するケースが少なくない。