税込み・税抜き、誰のための価格表示? 消費増税後の価格対応は様々。売り手の「論理」は理解されるのか
価格設定について、「消費税を含めた売価をまず考えて、そこから本体の売価を考え、仕入れをする。いくらだとお客様は値頃と思っていただけるか。今は980円だが、999円かそれとも1000円を超えても良いのか。お客様の状況を見ながら決めてい く」と、顧客の消費行動を重視する。
一方、百貨店やスーパーでは、税抜きか税込みのどちらかに一本化するのが難しい状況だ。大手百貨店では、大丸松坂屋を展開するJ.フロント リテイリングは総額表示を基本とする方針だが、これは「店頭表示やチラシ、POP、ウェブでの販売が総額表示で、値札は本体価格プラス税額が中心になる」(同社)ということ。
高島屋も「百貨店協会の見解に準じてやるが、(総額表示のための)値札変更は大変な労力と経費がかかり、取引先にも大きな負担になる。本体価格を基本と し、増税の部分についてはプライスカードやPOPで理解を求めていく」(鈴木弘治社長)という。一方、三越伊勢丹ホールディングスは「原則、本体価格プラス税額でやっていく」という。
税抜き、税込みと価格表示の考え方に濃淡はあるが、詰まるところ百貨店は総額表示以外の表示法も認めざるえない状況といえる。背景にあるのが、収益の根幹である利益率の高い衣料品の動向だ。
百貨店が価格表示を統一しにくいワケ
日本アパレル・ファッション産業協会は消費増税に関する価格表示について、本体価格プラス税額を基本方針としている。大手アパレルメーカーの大半は、この方針に準じる見通しだ。
百貨店のビジネスモデルの中心は、商品を販売した時点で仕入れを計上している。そのため、百貨店は在庫を抱えておらず、商品に値札を付けるのもあくまでアパレルメーカーだ。百貨店内で表示を付け替えたり、かつ販売ルート別に値札を付け分けることは、アパレルメーカーにとってコストと労力の両面で負荷が大きい。