もしも親友が「少年A」だとしたら、どうするか 凶悪犯のその後の人生描く映画「友罪」の挑戦

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もう1人の主人公はである元ジャーナリストの益田は、心を許した友の真の姿を探るとともに、封印していた自らの罪とも戦うことになる。人とのかかわりが希薄になりがちなこの世界の中で傷つき、打ちのめされてきた益田だったが、鈴木との出会いによって他者に向き合い、自分自身にも向き合う。

息子が人命を奪う交通事故を起こし償いを続けるタクシードライバー・山内役の佐藤浩市 ©薬丸 岳/集英社 ©2018映画「友罪」製作委員会

この難しい役どころに挑戦したのが、生田斗真。もともと本作のオファー前から原作に魅了されていたと語る生田は、脚本を読んで、「これは絶対にやらなくてはならない題材だ」と直感的に感じたという。

その反面、撮影中は、スタッフとともに「この映画を本当に作って良かったんだろうか」と自問自答し続ける日々だったという。しかし、それでも本作に向き合おうと思ったのは、「やはり同じ時代に生きる者として、エンターテインメントとして僕らが表現することは必要じゃないか」という思いからであり、覚悟を持って挑んだと振り返っている。

観客の心にズシリと重くのしかかる命題

さらに、子どもの命を奪った事故を息子が起こしたことで贖罪(しょくざい)の意識を抱え続けるタクシードライバー(佐藤浩市)。昔の恋人にそそのかされて出演したAV出演の過去から逃れられない女性(夏帆)。鈴木に心を砕くあまりに、実の娘と向き合うことをおろそかにしてしまった少年院の法務教官兼技官(富田靖子)など――。それぞれのキャラクターたちが抱える思いが重層的に重なり合って、重厚なドラマを醸し出している。

益田の元恋人で雑誌記者の清美(山本美月)は児童殺人事件と、17年前に少年Aが起こした連続殺傷事件との関連を追っていた ©薬丸 岳/集英社 ©2018映画「友罪」製作委員会

過去に罪を犯した人間は幸せになってはいけないのか? 心を許した友が過去に罪を犯したと知った時、それでも今までと同じように友でいられるのか? 大切な人を守るためなら、まわりと対立しても構わない、という強さを持てるか――。

この映画が問いかける命題は簡単に正解が出せるものではなく、「ではお前はどうなんだ」とばかりに観客の心にズシリと重くのしかかる。だからこそ、クライマックスにおける益田の決断が深い感動を呼び起こす。

(文中一部敬称略)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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