もしも親友が「少年A」だとしたら、どうするか 凶悪犯のその後の人生描く映画「友罪」の挑戦
一方の瀬々監督は、『感染列島』(2008年)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(2017年)といったメジャー映画を手掛ける一方で、『ヘヴンズ ストーリー』(2010年)、『菊とギロチン』(2018年7月公開予定)といったインディーズ映画を発表するなど、規模の大小を問わず、ボーダーレスに活躍する鬼才である。
犯罪の被害者と加害者が抱える負の連鎖というモチーフについては、第61回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した代表作『ヘヴンズ ストーリー』をはじめ、過去の瀬々作品でしばしば描かれてきたもの。そういう意味で、この作品は瀬々監督×原作者・薬丸岳という2人が出会うべくして出会った作品であるともいえるだろう。
「少年A」というキーワードが登場することからも、本作のモデルとなったのは、1997年に世間を震撼させた「神戸連続児童殺傷事件」であることは容易に推測される。当時、14歳の中学生がなぜこのような猟奇的な犯行に及んだのか。少年の心に潜む闇を解き明かそうと、マスコミ報道が加熱した。そして残虐な犯罪に対して、少年法はどういう立場を取るべきか、その是非も大々的にクローズアップされた。
「役者を観る映画」として見応えがある
しかし瀬々監督は本作を制作するにあたり、「まず、念頭に置いたのは『神戸連続児童殺傷事件』とは切り離さなくてはいけないということ」とキッパリと断言している。
「確かに始まりは『少年A』かもしれませんが、あくまでもこの映画は、こうあることも可能な“その後”という世界観の下で描いているんです。あのような事件が、自分たちと同じ世界で起きたことに気づき、いろいろと考え、悩む中で、同じ世界に生きる一人ひとりとして答えを探していく。そういう意味では明らかにフィクションというアプローチを取っています」と。
脚本を作る段階では、「業にとらわれていても生きていく人間の姿そのもの」を描くことが重要視され、加害者側の立場に寄せて作られている。その内容をどう演技につなげていくかという意味で、「役者を観る映画」としても見応えのある作品となっている。
かつての「少年A」=鈴木を演じたのは『64-ロクヨン-』でも瀬々監督とタッグを組んだ瑛太。自分の中に潜む残虐性を押し殺しながら、社会との接点を極力避けてきた男をミステリアスに演じている。
「衣装合わせの際に、瀬々監督から『僕が俳優だったらこの役は受けない』と言われましたね」と笑う瑛太は、「やはり演じるうえでの覚悟は必要でした。全面的に殺人を犯した人間に対して否定的なことを感じますが、観てくれる方に対して、役を通してどんな光を与えられるのかを想像しながら演じました」と、難解だった役作りを振り返る。
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