脳性まひの21歳ヴァイオリニストの壮絶人生

二人三脚で歩む母が惜しみなく注ぐ愛

2ステージが終わったあと、彼はロビーで倒れた。“危うく自分の治療費になるところだった”と笑うが、母への気持ちにも変化があった。

母への憎しみも大きかった

「がんと聞いて最悪の結果を考えましたし、目の前が真っ暗になりました。母のことはこの世でいちばん大好きだけど、いちばん憎んでいる存在でもあったんです。

父と離婚したことを8歳で初めて知って、母としての見方が少し変わったかもしれません。

子どもながらに“なんで大人は身勝手なんだろう”って考えましたね。さらに障がいで生まれたわけで、母を責めたときもありました。

憎しみながらも、それ以上に尊敬していたり愛していたりしたので、感情のバランスは難しかったですね。ただ、母はここまで全身全霊で僕を育ててくれたし、感謝しています」(水晶)

そう語る息子に、

『脳性まひのヴァイオリニストを育てて~母子で奏でた希望の音色~』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「今まで、こんな言葉で伝えてもらえなかったですし、最近は感謝の言葉ももらうようになりました。彼が脳性まひでなかったら“好きなことをやれば”という感じだったでしょうが、障がいがわかってからは、“障がいがあっても社会に出て幸せに生きられる道を作ってあげないと”という一心で来ました。

彼がヴァイオリニストとしてたくさんの人の前で演奏して、拍手される姿だけは見たい。せめてそこまでは見届けたいと思っています。シングルマザーですし、環境的にもおカネは遺してあげられないのですが、“2人で歩んできた道は間違ってなかったんだな”って思いたいですね」(啓子さん)

そう話す母子の顔は、希望に満ちあふれていた─―。

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