脳性まひの21歳ヴァイオリニストの壮絶人生 二人三脚で歩む母が惜しみなく注ぐ愛
「CDを見ても、この人、誰だろう? 眉毛が濃いお兄さんがいるなぁって(笑)。本当に実感がわかないですね」
コンサートでは髪の毛をシルバーに染め、アグレッシブなパフォーマンスを見せるヴァイオリニストの式町水晶(しきまち・みずき)。彼が3歳で脳性まひと診断され、両上肢機能障がい(6級)、両下肢機能障がい(4級)のある障がい者と気づく人は少ないだろう。
壮絶な病気といじめを乗り越えて
「両手、両脚のまひ以外に、腎臓糖尿、網膜変性症、飛蚊症、肺動脈弁及び大動脈弁狭窄などと診断されました。なので、楽譜を見ることはできません。それでも、ステージでは座らず立って演奏するというのが彼のこだわりなんです」
そう話すのは、ここまで水晶を女手ひとつで育てた母・啓子さん。生後2カ月で夫と離婚してからは、シングルマザーとして働きながら、プロのヴァイオリニストを目指す息子を一身で支えてきた。
そんな母子の努力が実を結び、4月11日にはキングレコードより待望のデビューアルバムが発売される。だが、ここまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。
「シングルマザーで貧しい家計の中、ヴァイオリンという高貴な世界に飛び込んだものの、彼の身体のまひはひどくなり、目の病気や内臓疾患もあり、何度も挫折と奮起を繰り返してきました。
小学6年生のときには凄惨ないじめがあり、今も彼に大きな傷を残しているんです」(啓子さん)
いじめでヴァイオリンをも辞めようと思った11歳のころ。そんなときに出会ったのが、ポップ・ヴァイオリンの第一人者である中西俊博氏だ。