アマチュア野球審判員の知られざる熱い仕事 「1試合5000円」でも技術と情熱を注ぐ

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審判員の仕事は予想以上に厳しい。技術を求められるホワイトカラー的な一面、体力勝負のブルーカラー的な一面がある。たとえば、試合中はグラウンドに立ちっ放しなので、炎天下や肌寒い日は自己管理が大変だ。攻守交代の時などに水分補給はできるが、基本的にトイレ休憩はない(もちろん緊急の場合は行けるが)。

報酬が低くても情熱は熱い

審判用の更衣室がない試合場もあり、そんな時は、自家用車の中で着替える。特に球審は、打球が直撃するリスクもある。1試合で5000円平均の報酬は、“技術料”や“拘束時間”を考えると低いだろう。

それでも2人に代表される各審判員の情熱は熱く、「生まれ変わっても審判員になりたい」「野球を通じて得られた人生の幸せ」を語る。野球用具メーカーの「ベルガード」のように、一部の審判員に高品質の防具を無償提供して支援する企業もある。

現在、KUCが依頼先に提案するのが「2人制」の審判派遣だ。“日本人で最もMLB審判員に近づいた”平林岳氏(現NPB審判技術委員)が以前から提唱する手法でもある。

プロ野球の試合では、球審や塁審、線審の「4人制」だが、草野球の審判員は「1人」で行うことも多い。ストライクやボールの判定をする球審が、打球が飛べばマスクを外し、アウトやセーフの塁審もすれば、線上に飛んだ打球のフェアやファールを判定する線審も担うのだ。だが、1人の審判が広いグラウンドのすべての打球を判定するのはむずかしい。

球審のマスクを外し、打球を追う渡辺氏(写真提供:関東審判倶楽部)

「2人制」とは、2人の審判が臨機応変に位置取りを変えて、打球や走者を見る。どのプレーでは、どう動くか。よりよい判断の引き出しが増え、技術向上に役立つという。

そうした技術にこだわりつつ、KUCは時に “顧客満足”もめざす。試合前のキャッチボールを見て、あまりレベルが高くないチームには厳密に「ボール」の判定をとらないこともある。そうしないと四球を連発して、試合がつまらなくなるからだ。

プロ野球から草野球まで全国各地で試合が多い時季だ。野球好きの人は、時には選手ではなく、審判員の動きに注目して試合を観ると、違った楽しみ方ができるかもしれない。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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