しかし、「自分がこうしたい」と思っていても、現実はそう簡単に思い通りにはならない。なぜ希望通りいかないかというと、人手不足に困っている仕事もあれば、人が殺到する仕事もあるという、「需要」と「供給」が存在するからだ。就活における「需要」と「供給」は次の通りになる。この需給バランスによって、求人の就活難易度が変化していく。
まず確認しておきたいことは、「売り手市場」というのは、就活市場全般のことを表しているわけではない、ということだ。会社の従業員規模によって、状況はガラッと変わってくる。リクルートワークス研究所によると、2018年卒の大卒求人倍率は、従業員規模で次のようになっている。求人倍率は1人に対してどれだけの求人(仕事)があるのかという指標。数値が高いと就職しやすく、数値が低いと就職がしづらいことを意味する。
・300人未満:6.45倍(1人につき6.45倍の求人がある)
・300~999人:1.45倍(1人につき1.45倍の求人がある)
・1000~4999人:1.02倍(1人につき1.02倍の求人がある)
・5000人以上:0.39倍(1人につき0.39倍の求人しかない)
データからもわかるように、超売り手市場というのは中小企業のみの話。大手企業では、1つの求人に対し、2.5人が争っているのが実情だ。なお、間もなく2019年卒の最新データが発表される頃だが、大きな変化はないだろう。
売り手市場は「人気企業の内定を得やすい」のか?
しかし、それに学生は、気付いていない。近年のデータを見ると、売り手市場になると、大手企業の人気が上がり、中小企業の人気が下がるという傾向がある。理由は、「売り手市場なら、自分も人気企業の内定がもらえるかも!」という心理が作用しているのでは、と思われる。
大企業も好景気を反映して、採用をある程度増やしているが、それ以上に大企業を志望する就活生が増え、競争率はむしろ上がっていく。大手企業にチャレンジするのはよいが、大手ばかりだと、就活で苦戦してしまう可能性が出てくる。
2 事務職は非正規が多く、リストラ対象になりやすい
現場の感覚として、既卒の人には事務職を志望している方が多い、と感じている。事務職の求人倍率はここ数年、かなりの低水準で推移している。厚生労働省が発表している一般職業紹介状況によると、2017年の「一般事務の職業」の有効求人倍率は0.30倍、ここ数年で改善しているとはいえ、1枠の求人に対して3人以上で競う状況になっている。
これには次の2つの要因があると考えられる。
・入力作業のような単純な事務作業はシステム化により削減
厚生労働省によると、事務職の非正規社員比率は製造スタッフや販売員と並び、全体の3~4割が非正規社員として雇用している。そのため、正社員として事務職を採用している企業は少なく、求人倍率が上昇しているのが現状だ。同時に、テクノロジーの進化によって、単純な作業はどんどんITによってシステム化されてきている。
昨年にはメガバンク3行が約3.2万人の従業員をリストラするとの発表もあった。これからAIが本格的に普及してくると、単純作業はさらに減っていくことが予想される。事務職は就職に苦労するだけでなく、将来的には人員削減の対象にされるリスクは高いといえる。今一度、事務職を目指す理由を考えてみた方がいいだろう。
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