財務省「2トップ」不在、国会混迷の異常事態 最強官庁の解体論も飛び交い政権危機深まる
一方、下村博文元文部科学相も22日の講演で、セクハラ被害者とされるテレビ朝日の女性記者が福田氏との会話を録音して週刊新潮に告発したことについて、「ある意味で犯罪」と語ったことが23日付の共産党機関紙「赤旗」で報じられた。共産党が公表した音声データによると、下村氏は「確かに福田次官がとんでもない発言をしているかもしれないけど、しかし隠しテープでとっておいてテレビ局の人が週刊誌に売ること自体、はめられていますよね。ある意味で犯罪だと思う」などと麻生氏とも重なる発言をしており、これも激しい批判を呼んだ。下村氏はコメントで、「オフレコの場での会話を隠し録音することは取材倫理違反だ」としながらも、「『ある意味犯罪』と述べたのは不適切だった」とその部分の発言は撤回し、謝罪した。
下村氏は首相の長年の盟友で、長尾氏はいわゆる「魔の3回生」と呼ばれる安倍チルドレンの一員。両氏とも首相の保守思想に共鳴する議員だけに、野党側からは「彼らの異様な言動は安倍政権の体質そのもの」(希望の党)との批判が噴出し、政権危機をさらに加速させかねない事態を招いている。
「歳入庁」創設案に、「財務省自爆テロ」説まで流れ
一方、1982年の旧大蔵省入省組で福田氏と同期の片山さつき自民党参院議員は「セクハラは感じる相手方の問題だ。弁解の余地はない。辞任は当然だ」と断言した。さらに首相側近の萩生田光一自民党幹事長代行も、財務省の一連の問題については「信じられない不祥事が続いている。それも組織内の自己防衛のようなことが横行している。深刻な事態だ。今回だけの特別な事態なのか、それとも霞が関に昔からある仕事の仕方だったのか。後者ならば大変だ」と財務省の対応を厳しく批判した。
こうした財務省批判の高まりを受けて、永田町では財務省解体論が広がり始めている。ちょうど20年前のいわゆる「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」といわれた接待汚職問題を契機に、旧大蔵省は財務省と金融庁(当時、金融監督庁)に分離された歴史がある。そうした過去の苦い経験をまったく忘れたかのような今回の不祥事連発に、有識者の間では、徴税を担当する国税庁を財務省から分離して「歳入庁」を創設する案も浮上している。財務省は歳入と歳出を握ることで「最強の官庁」の地位を維持してきただけに、こうした財務省解体論の広がりは、財務省にとって「最も恐れた事態」(幹部OB)であることは間違いない。
そもそも、安倍政権では財務省の軽視が目立っている。2012年暮れの第2次安倍政権発足から1年半後の2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられた。もともと増税に慎重だった首相が、財政再建を掲げる財務省に押し切られる形で増税を認めた結果だが、その後の景気低迷で「財務省にだまされた」と怒り、それが10%への引き上げを首相が2度にわたって先送りしたことにもつながったとされる。
しかも、首相秘書官など官邸のスタッフは経済産業省出身者が中軸となり、官邸での財務省の地位低下も際立っている。経産省は景気拡大最優先の立場だけに、内外の要因で景気が減速すれば、2019年10月に予定される消費税率10%への引き上げのさらなる先送りも取り沙汰される状況だ。だからこそ「財務省は森友問題でも首相の意向を最大限忖度して、ご機嫌取りした」(自民長老)との見方が広がる。
さらに、永田町では、今回の財務省の政権危機を加速させるような拙劣な対応も「もしかしたら安倍政権打倒への自爆テロではないか」とのうがった見方さえ流れている。たしかに、石破氏や岸田文雄政調会長ら「ポスト安倍」の有力者達は、首相と違ってそろって財政再建論者とみられているからだ。
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