財務省「2トップ」不在、国会混迷の異常事態 最強官庁の解体論も飛び交い政権危機深まる

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国民的批判を増幅させたのがセクハラ疑惑発覚以来の財務省の拙劣な対応だ。

まず福田氏自身が「週刊誌報道は事実と異なり、名誉棄損で訴える」と全否定し、新潮が音声データを公開しても「自分の声かどうかわからない」「全体を見てもらえばセクハラでないことがわかる」などと強弁し、被害者とされる女性への謝罪も拒否した。ただ、野党は激しく追及し、与党内からも「賢明な判断が必要」(石破茂元幹事長)と辞任を促す意見が相次いだため、18日になって麻生財務相に辞任を申し出た。ただ、その際もセクハラは否定し、「職責を果たすことが困難になった」と話し、辞任の理由は野党の追及やメディアの過熱報道だといわんばかりの対応が、財務省全体への批判と国民の嫌悪感を拡大させた。

さらに、次官代行として事態収拾に当たっている矢野官房長も、国会での野党の追及に、被害者とされる女性記者について「(名乗り出ることは)そんなに苦痛なことなのか」などと答弁し、「あまりにもセクハラについて認識不足」(有識者)とメディアなどから集中砲火を浴びた。しかも、事務方を指揮監督する立場の麻生財務相も「まだ事実関係が明確でない」などとして頭を下げず、いつもの"べらんめえ口調"で記者団の質問を茶化したりしたことで、セクハラ問題での財務省の体質そのものが批判の的となった。

安倍首相に近い議員の発言が政権危機を加速

麻生財務相は24日の閣議後会見で、福田氏のセクハラ疑惑での次官辞任について「はなはだ遺憾だ」と述べる一方、「世間には、(福田氏が)はめられて訴えられているのではないかと、いろいろな意見も世の中にいっぱいある」と事実関係の確認を優先する立場を強調した。さらに、記者団の「処分してから辞任を認めるべきでは」との質問には「官房付きにして誰が給与を払うのか。税金だよ」と逆質問でけん制。野党が指摘する自らの任命責任に関しても「今の段階で進退は考えていない」と否定したが、こうした麻生氏の言動については与党内からも「野党だけでなく、国民の反発も招く」(国対幹部)と批判する声が少なくない。

今回のセクハラ疑惑については財務省だけでなく自民党内からも不穏当な発言が相次いだことも事態を深刻化させている。20日には野党6党の女性議員らが黒い服の装いで「#Me Too」と書いたプラカードを持って国会内などで抗議行動を展開した。これについて自民党の長尾敬衆院議員はツイッターに「セクハラとは縁遠い方々」など書き込んだが、「発言自体がセクハラだ」など批判が殺到したため、書き込みの削除と謝罪に追い込まれた。

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